聖乃あすかさん主演、花組バウ公演『舞姫』観劇してきました。
評判どおり素晴らしい公演でした。
(以下、ネタバレありで感想を記しますので読み進めご留意ください。長文です)
花組バウ『舞姫』感想
原作は『エリート青年が留学先で現地の美しい娘と恋に落ち、最終的に娘を捨てて帰国することを選ぶ』というトンデモない話しです。
しかしそれを植田景子脚本でタカラジェンヌが演じると『美しくほろ苦い青春の1ページ』になる不思議。
これが宝塚か!!
この作品の植田先生は神がかっています。
セットはシンプルながら紙吹雪や映像が使われて華やかですし、舞台の両脇をつかった日本とヨーロッパの切り替えもみごと。
小道具の使いかたも秀逸で、恋の始まりと愛の終わりを『扇を使った舞』で美しく哀しく表現したのは震えました。
ひとつ残念だったのは、歌が多いのにも関わらず耳に残らなかったことでしょうか。
聖乃あすかは正統派2枚目が似合う
聖乃さんは『万人に好まれる美形』ゆえ、軍服やスーツを着た正統派2枚目がよく似合いますね。
2回目のバウ主演ということで、スターオーラも自信も溢れんばかり。
芝居運びも安定していて、(手紙をもってくるハズの万里さんが登場しない)ハプニングも、とっさの機転(本の続きを読む演技)で切りぬける頼もしさを見せていました。
とはいえ『男役10年』に入ったばかりの聖乃さんには成熟していない瑞々しさもあり、それが豊太郎の魅力と重なります。
たしか初演の愛音羽麗さんも研10でしたね。
豊太郎(聖乃)は留学先のドイツで貧しい踊り子エリス(美羽)と出会い、恋愛にのめり込んでいくのですが、それがスキャンダルとなり免官。
国からの援助は打ち切られ、日本に帰る手立ても失ってしまいます。
そんなときに届いたのは、母(美風)が自ら命を絶ったという知らせ。
息子の生き方を正すために死を選んだ豊太郎の母のことを、ヨーロッパ的価値観をもつエリスが理解できないのが切ない。
どん底の豊太郎ですが、東大首席の超エリートはこのままでは終わりません。
帆純まひろと聖乃あすか
相沢(帆純)のおかげで大きな仕事を成功させた豊太郎は、再び第一線で活躍することを約束されます。(ただし帰国が条件)
豊太郎の能力が発揮されるロシアのシーンは胸がスカッとしますよ。(こんなデキル豊太郎がもっと見たかった)
それにしても相沢が良い人過ぎて涙がでます。
自分もエリートなのに、豊太郎の将来のためにエリスに手切れ金をわたす憎まれ役まで買って出るなんて。
相沢「俺を憎んでいるか?」
豊太郎「憎むべきは己の心だ」
帆純さんは「1期ちがいで一緒に育った私と聖乃だから出せる関係を見せたい」とNOW ONで語っていましたが、印象的な良いシーンでした。
侑輝大弥と聖乃あすか
で、もうひとつの心振るわせるストーリーが、豊太郎と馳(侑輝)の友情物語です。
画家を目指して留学したものの、貧しさゆえ病に倒れた馳。
「日本には帰らない」と強がっていた彼が死ぬ間際に「おかゆが食べたいな~」とつぶやくシーンは、
侑輝さんも聖乃さんもボロボロ涙をながしていて客席もすすり泣き。
いまさらですが、侑輝さんって良い役者ですね。
痩せ方が心配になるほどリアルな役づくりがスゴかったです。(メイクなのでご安心を)
エリスという難役・美羽愛
愛にすがり、不安におびえ、最終的に精神を病んでしまうエリス。
それを「豊太郎のせいだ!」と客に思わせてしまうか、「救いがある」と思わせるかは美羽さんの演技次第。
こんな難しい役をよく頑張っているなと思いますし、良い役にめぐり会えて良かったですね。
その他キャスト感想
豊太郎に憧れる青年(青木)を演じた美空さんは、短いながら聖乃さんとガッツリ2人芝居。
推されている印象をうけました。
留学生仲間の泉さん(岩井)は、ユーモアのあるキャラで客席の笑いをさらい、
豊太郎を敵視する紅羽さん(黒沢)は、気持ちがいいほど憎々しくて客席を凍りつかせます。笑
「100年後の日本のために」と豊太郎を鼓舞する一樹さん(天方)と和海さん(ドクトル)の温かみのある演技はさすが。
で、帰国した豊太郎はふたたび出世街道に戻ったわけですが、
後味の悪さよりも作品の感動が勝るのは植田先生や花組のチカラ。
良い舞台をみた満足感で胸がいっぱいです。
チームの雰囲気もとても良さそう。
カテコで聖乃さんが「ドイツの風を感じていただけるように頑張ります」と言うと、
帆純さんや一樹さんが手をヒラヒラさせて笑いを誘っていました。