前回記事、感情のままに書き綴った乱文にもかかわらず、ご覧くださいましてありがとうございました。
今回は、礼華はるさん主演『月の燈影』観劇してきましたので感想を記したいと思います。
(以下、ネタバレありです。読み進めご留意ください)
月組「月の燈影」感想
簡単には泣かせてくれない
名作とは聞いていましたが、こんなに泣かされる作品だったとは。
ですが、簡単には泣かせてくれません。
ストーリーは時系列で展開しないし、用語も難しく、物語の輪郭が見えてくるのに時間がかかります。
『あたまを空っぽにして楽しめる親切なエンタメ』に慣れてしまっている私の頭は久しぶりにフル回転。
分からない用語を調べたい衝動をグッと我慢し、とにかくセリフに集中しました。
その過程を乗りこえ 話しが繋がってくると一気に面白くなってきます。
大野先生って『男の友情』という萌えの描き方がうまいですね。
生き別れた幼馴染が再会したとき、かつての友情を取り戻そうとする次郎吉(彩海)と、次郎吉を悪の道に近づけたくない幸蔵(礼華)は「人違いだ」と突っぱねます。
生き別れて9年が経つのに2人は固い友情で結ばれていて、相手を思うがゆえに迎える結末は本当に切なかった。
コミカルなシーンや2番手(彩海×天紫)の恋愛を入れることで小さな山場をつくり、
悪役の陰謀にハラハラさせながら、ピークに『究極の友情』をもってくる脚本に唸りました。
『花のいそぎ』といい、大野先生の和物は良いですね。
話も暗いし舞台も暗いし、主人公にロマンスはないし、ファンのためというより生徒の勉強のための作品かな?なんて一瞬でも思ってすみませんでした。
明るいフィナーレに救われましたし、紫陽花や花火など江戸情緒を感じさせる演出も、三味線などの和楽器をつかった音楽も良かったです。
ただ、大野先生が一番描きたかったところだと思うので、これを言ってしまうと元の子もないのですが、
幸蔵がねずみ小僧だったというオチは要るような要らないような。。
このエピソードを入れることにより時系列が乱れ、ストーリーが複雑化しているように思いますし、ねずみ小僧になった理由も納得できるような出来ないような‥
次郎吉の死だけでも悲しいのに幸蔵まで獄門されてしまうのは、救いがなさすぎて苦しくなりました。
でもその『やるせなさ』こそ、この物語の醍醐味ゆえ、ねずみ小僧のエピソードについては感想が分かれるところだと思います。
キャストごと感想
経験がものをいう日本物。
初演にも出演した専科さんたちが舞台をギュッと引き締めています。
歩き方だけで悪者だと伝わる夏美ようさんも、佇まいで器の大きさを醸し出す悠真倫さんも、ただただ素晴らしかった。
若手も大健闘。
『応天の門』の多美子でチャーミングな演技を見せた花妃舞音さんは 幸蔵に思いを寄せるお壱を好演。
ヒロインが似合う花妃さんなので、再演にあたり、もう少し礼華さんとの絡みを増やしても良かったんじゃないかな、先生。
大注目の新人・一輝翔琉さんは、淀屋にそそのかされて幸蔵を殺すはずが誤って次郎吉を刺してしまうという重要な役どころ。
スラッと立ち姿が美しく華やか。ずいぶん表情も豊かになりましたね。
本作のラブ担当は、天紫珠李さんと彩海せらさん。
なんでもできるお2人なので個々としては申し分ないのですが、貫禄の違いなのか、相性の問題なのか、すこし姉弟味を感じてしまいました。
それにしても彩海さんがうまい!
望海風斗さんや月城かなとさんを感じさせる瞬間があって、抜群の歌と芝居で客席を笑わせて泣かせて大活躍。
なぜ初演のようにダブル主演にしなかったのか疑問が残ります。
ねずみ小僧こと、幸蔵を演じた礼華はるさんは公演ごとにスターオーラが増しているように思います。
バウ初主演で無口な辛抱役は大変だったと思いますが、初演の彩吹真央さんの演技指導のたまものなのか、抑えた演技のなかに幸蔵の心の葛藤を上手くにじませていました。
涼やかな顔立ちに着物が似合いますし、フィナーレの群舞はとびきりカッコよかったです。
初バウが成功したあと、このまま組内で路線へとひた走るのか、それとも、
組替えがあるのか、これからの動向と活躍に注目したいと思います。
月城かなとさん主演『DEATH TAKES A HOLIDAY』が19日から上演されることが決まりましたね。本当に良かったです。
シアターオーブチームもバウチームも全員元気に千秋楽まで駆け抜けられますように。