観劇してから日にちが経ってしまいましたが、
天飛華音さん主演、星組バウホール公演『My Last Joke』の感想を記したいと思います。
以下、ネタバレ含みますので読み進めご留意ください。
天飛華音主演・バウ『My Last Joke』感想
作品あらすじと演出雑感
エドガー・アラン・ポーという有名すぎる名前とは裏腹に、彼がどんな人物かを知る人は少ないと思います。
エドガー(天飛)は幼くして親をなくし、引き取られた先の義父との関係は最悪。
愛情を示してくれた義母も亡くなり、家を飛び出したエドガーは、将来妻となるヴァージニアとその母親が住む家に居候することになる。
と、ストーリーの導入はこんな感じです。
真っ暗な舞台の奥に(生死の境を表す)大きな扉が一枚置いてあって、死者はその扉から退場するなど効果的に使われています。
『ロミオとジュリエット』の死のような存在(鳳真斗愛)をつかって人物を死に誘うのも上手い演出。
たくさん歌があるにもかかわらず、文学を扱う作品ゆえセリフ回しがやや小難しく、ストレートプレーのような印象を受ける作品でもあります。
それゆえ星組のパッションとエネルギーはいつもと違う方向にむいています。
行間を読むような緻密なお芝居にメンバー全員が挑戦していて、まさしく若手の学びの公演。
良い意味で星組らしくない作品でした。
演出の雑感は全てがもう一歩といったところ。
同じシーン(エドガーの部屋にヴァージニアがノックもしないで入ってきて文句を言い合いながらジャレる)を2回繰り返したり、客席で演技をさせたり、凝っているわりには効果的でないのが残念。
もうひとつ残念だったのは、成人しているエドガーが11~12歳のヴァージニアに惹かれていく様子が いまいち伝わらないままのバックハグ。
本来ならキュンとなるシーンなのに、突然の展開にただただビックリ!
ここに至る心理の変化をしっかり描かないと あれじゃあどう見ても◯罪…
う~ん、竹田先生って、もしかして恋愛書くのが苦手?という不安が頭をよぎりました。今後に期待しています。
出演者感想
エドガー・天飛華音
俗にいう『大人子ども』であるエドガーを、宝塚の主人公として魅力的に演じるのは難しかったと思います。
だけど天飛さんの芝居心と歌唱力で 難役をみごとに昇華していて頼もしいかぎり。
目ヂカラも包容力も増して、さらにかっこよくなりましたね。
次回4番手昇格の『RRR』では どんな役が当てられるのか今から楽しみです。
【余談】客席降りのとき天飛さんから良い香りが漂ってきました。
ヴァージニア・詩ちづる
純粋無垢を表す白いドレスがよくお似合い。
子役の経験も豊富なので、とにかく少女時代に違和感がなく可愛かったです。
亡くなる瞬間までエドガーを思い続けるいじらしさを純粋にも哀れにも見せて、客席の涙を誘っていました。
『赤と黒』を経て歌唱力もパワーアップ!(いつでもトップになれそうな勢いです)
エドガーと対立する編集者グリスウォルドを演じた碧海さりおさんは、もうすっかり上級生。嫌な役も品を損なわず絶妙な加減で上手い!
105期の稀惺 かずとさんはエドガーの味方となる編集者。
滑舌が良いのでストーリーテラーのセリフが聞き取りやすい。仕事ができる切れ者という感じも出しつつ優しさも滲ませて良かったです。
エドガーのライバル的詩人グリスウォルドに105期の大希颯さん。
上手いのは知ってましたが、こんなに華がありましたっけ?というくらい輝いていました。美声をとどろかすロングトーンは必聴。
【余談】105期のふたりはどちらもスター格なので、95期の二の舞いを避けるためにも早く組替えさせて離した方がいいのでは。
女流詩人でありエドガーの良き理解者であるフランシスを演じた瑠璃花夏さん。
聡明で芯のある大人な女性を ほのかに色気を香らせて好演していただけに恋愛部分が皆無だったのはもったいない。やっぱり竹田先生って…
この公演にフィナーレはありませんが、パレードに振りや歌がついているので明るい気持ちで幕が降りるのは救いです。
残念なことに宙組公演中止の影響で劇場周辺は閑散としていました。
バウ公演は止まることなく無事に千秋楽を迎えられることを願っています。