体調不良者が出て1週間遅れで実施された花組『アルカンシェル』新人公演。
配信視聴しましたので感想を記したいと思います。
小池修一郎への挑戦状?
それにしても新人公演演出の平松先生、思い切りましたね。
1本物の新公の場合、上演時間の都合上、シーンを丸ごとカットして登場人物のセリフ説明で補うという手法が取られます。
なので『アルカンシェル』でもダンスナンバーがカットされたり、人物の設定が変えられたりしていたのですが、
冒頭、まずイヴの設定をぺぺの孫ではなく息子としていておどろきました。
【余談】イヴが息子だとラストにどう繋がるの?と思っていたら、ラストのセリフ(「80年後の今に~」)はそのままなだったので、あれ??いったいイヴは何歳なの??と混乱しましたが、そもそもストーリーテラーなので細かいことは気にするな!ですかね。
他にも変更箇所は、レジスタンスは男女混合、アネットの代役ラテンショーカットなど、いろいろありましたが、
いちばん衝撃だったのは、コンラードとの契約でドイツに行ったカトリーヌをマルセルが連れて帰ってしまったところでしょうか。
えっ?この極限状態でアルカンシェルと仲間を守るためにドイツに残る選択をするのがカトリーヌという人なのでは?
そりゃあ初見では私も『せっかく迎えに来たのに帰らへんのかーい』と心の中でツッコミましたよ。
だけどそこで残る選択をするカトリーヌだからこそマルセルが惚れ直すんですよね。ふたりの絆が深まるんですよね。
う~ん、多少のことは新公だからと流せますが、
登場人物の関係性や、キャラクターそのものを変えてしまうような、ここまでの大改変に原作者はどう思うのか。
さらには、令和の時代に違和感が残るような本公演のセリフをバッサリカットするなんて、平松先生、これって小池先生への挑戦状?
というのは冗談ですが(全体的には原作へのリスペクトを感じますし、おそらく小池先生のチェックは入っているでしょうから)、
大物演出家に忖度しない大胆な変更に胸がスカッとした人も多いのではないでしょうか。
個人的には新公仕様に変更されたセリフ「未来を託す→未来をつなぐ」に、ちょっと狙いすぎのような気もしましたが、
生徒に愛情のある先生だなと思いました。先生のオリジナル作品が待たれます。
キャストごと感想
やはり公演中止の期間のお稽古不足が響いたのか、全体のまとまりとしてはもう一歩といったところですが、個々の頑張りは目を見張るものがありました。
主演(マルセル)の天城れいんさんは、まさにいま伸び盛り。2度目のセンターということもあり舞台に立っているだけで人を引き付ける輝きが増したように思います。
「良いことも悪いことも苦しみも苦しみも、何一つ欠けても良いものにはなりません。どんなことがあっても同じ方向を向く大切さを学びました」という素直で誠実なご挨拶に胸を打たれました。
そしてやっぱり強い!いちばん落ち着いていたのがヒロイン(カトリーヌ)七彩はづきさんでした。ぶれない歌、落ち着いた芝居、誰とでも似合わせられるヒロイン力。これからが楽しみです。
新公らしさがないくらいハマっていたのがイヴの美空真瑠さん。声も滑舌も良くてセリフがスッと入ってくる。いつか主演が見てみたいですね。
夏希真斗さんは専科の大役(コンラート)がんばりました。最初は緊張が見られたけれど後半どんどん良くなっていきました。ラストは見事な◯にっぷり。本公演での活躍が期待されます。
愛蘭みこさんは劇場を取り仕切るマダムニコル役で新境地。可愛い役だけでなく大人っぽい役も上手でビックリ。これで退団なんて本当に残念です。
同じく退団が決まっている美里玲菜さんもひときわ輝いていました。
そしてどこにいても目立つのが星空美咲さんと美羽愛さんのおふたり。さすがのスターオーラに脱帽です。
『アルカンシェル』はトップコンビ退団仕様の当て書きで、新公でやるには本当に難しい作品だったと思います。
だけど下級生ながら出演者ひとりひとりに華があり、
優しさと柔らかさがにじみ出る舞台に、宝塚を見たという満足感を与えてくれたのは、さすが花男花娘だなと。
新人公演メンバーのこれからの活躍を楽しみにしています。