宙組バウ公演『MY BLUE HEAVEN-わたしのあおぞら-』観劇してきました。
じつは横浜が舞台だと聞いてちょっぴり不安だったんですよね。
だって,ただでさえ当たり◯ズレの大きい齋藤吉正先生が、地元(横浜)愛が強すぎるがゆえにやらかしてしまった明日海りおコンの例がありましたから。
だけど『わたしのあおぞら」は、そんな心配が杞憂に終わる良い作品でした。
異色だが王道「MY BLUE HEAVEN-わたしのあおぞら-」
まず、地味過ぎて宝塚では避けがちな”戦後の日本”を、あえて扱ったのが勝因のひとつ。
着物と洋服が混じり合っている舞台は華やかですし、童謡とジャズが混在した音楽も良い。
そしてとにかくこの時代に生きる人たちが魅力的なんですよね。
戦争を引きずったまま過去から抜け出せない人にも、外国文化を受け入れて前に進もうとする人にも感情移入できますし、
かといって綺麗ごとだけではなく、戦後の混乱に生じた悪事をしっかり描くことでハートフル過ぎず、物語の輪郭がハッキリしていたのも良かったです。
そこに ”幼馴染の三角関係” なんていう少女漫画的萌え要素をぶっ込んでくるもんだから、盛り上がらないハズがありません。
しかも ”愛をこじらせたツンデレ主人公” と ”路上で愛を叫ぶ直球勝負の2番手” が、かわいいヒロインを取り合うのですから悶絶ですよ。(その割に最後はアッサリだったけど)笑
そして若手が経験を積む場として、おそらく全員にセリフが与えらていたということも良かったですね。セリフが無いときでも悪者チームや孤児院の子どもとして芝居する機会が多分にあって、これぞ座付き演出家の配慮!(先生、当たり◯ズレが~なんて言ってすみません)
キャストごと感想
主要キャスト
主演を務めた風色日向さん(ジョーイ)。
半年遅れの上演となった主演公演ということもあり気合充分!全身で主演していましたね。両親を早くに失くした悲しみや戦場で受けた心の傷を胸に秘め、底抜けに明るいあんちゃんとして皆を笑顔にする太陽みたいな青年が本当によく似合っていました。舞台映えする大きな身体から発せられるスターオーラは格別。舞台が小さく感じました。
ところでカテコで全員(各回2名ずつ)を紹介するというは風色さんのアイデアかしら?これまで表に出る機会がなかった下級生にとって励みになるステキな試みですね。
2番手役の亜音有星さん(ライアン)。
なんと華のある人なんでしょう。
混血児ということでイジメを受け、心に傷をおいながらも、それを乗り越えて正しい道に進み仲間を助けるという、いまの彼女に当てるにはヘビー過ぎる役でしたが、苦悩する表情すら美しく、どんな瞬間もスターしていて頼もしかったです。歌もずいぶん上手くなりました。
ヒロインの山吹ひばりさん(ヤヨイ)はすでに東上ヒロの経験もあり貫禄充分!『大逆転裁判』で瑠風輝さんと共に滑舌を頑張った成果か、マイク乗りがよくセリフが聞き取りやすかったです。ヒロインらしからぬ汚れたシーン(孤児院の子どもたちのために金持ち相手に…)でも品が保たれていたのも良かった。ただヒロインとして華もあり技術的にも申し分ないのに、誰とでも合いそうで、すごく合う!というわけではなさそうというのが正直なところです。
その他のキャスト
若手で目を引いたのはハジメ役の奈央麗斗さん。朝美絢さんと同じくある写真がバズって人気に火がついたというだけあって驚くほどの美形!だけでなく、セリフがないシーンでもヒロインへの複雑な心情(恋心orシスコン)をにじませる芝居力よ!これからが楽しみです。鳳月杏さんに似ていると話題の波輝瑛斗さんもヒゲを付けたり外したり様々な役で大活躍!ダンスの求心力はずば抜けていると思います。
MVPは戦争未亡人の小春乃さよさん。ジョーイが財産目当てで近づいたことを知りながらの、あの芝居。素晴らしかったです。大路りせさん&風羽咲季さんのお笑い探偵チームも大健闘!この作品で卒業する愛未サラさんは命がけで子ども守る母親を熱演。
若き副組長・秋奈るいさん(宮司)は役と本人がリンクしたような、みんなに愛情を注ぐ器の大きな人物。そして特出すべきは主人公を追い詰める悪役をきっちりやりきった真名瀬みらさんでしょう。憎まれ役が上手いと物語が盛り上がりますね。
宙組にとって久しぶりのお芝居となった『わたしのあおぞら』は、セリフをしゃべるのが初めてという人もいて、とにかくみんながむしゃらに己の役と取り組んでいた印象。感情が高ぶると空回ってしまう場面すら愛おしかったです。
時代設定は異色であるものの、話しの筋ととしては王道なので万人に受け入れられやすい作品だと思います。
配信もありますし、この作品を通じて宙組の頑張りがたくさんの人に伝わることを願っています。