連載開始から50年以上が経ったいまでも絶大な人気を誇る『ベルサイユのばら』。
劇場版の公開から3週間が経ちましたが、関西のとあるシネマでは平日の夕方にも関わらず8割方埋まっているという盛況ぶり。
SNSの評判も上々で、「このまま宝塚で上演すればいいのに!」という感想をみて、期待に胸を膨らませて観にいきました。
劇場版『ベルサイユのばら』正直感想
想像以上にミュージカル
黒木瞳さんの落ち着いたトーンのナレーション(時代説明)が心地よく、物語はマリーアントワネットの少女時代からスタートします。
顔の三分の一を占める大きな瞳がわざとらしく光ったり、ショックなことがあると顔に縦線が入るのは原作そのまま。、
ザ・昭和感な絵面に、最初はあちこちで笑いが起きました。
だけどそれにもすぐに慣れ、世界感に没入しかけたころに始まった”ポップス風ミュージカルソング”にビックリですよ。
マリーが、オスカルが、フェルゼンが、アンドレが、歌う歌う!
1789風の”革命の歌”なんかもあり、想像以上にミュージカルでした。
吹替を担当している平野綾さん加藤和樹さんらミュージカル俳優たちの歌は圧巻で、みなさん素晴らしかったです。
とはいえ、 ”昭和アニメ映像” と ”令和のPOPS風ミューソング” のチグハグ感がなんとも落ち着かなくて。
歌で尺をとるより人物の背景や心理描写をもう少し丁寧に描いてほしかったな。
オスカルが女装してフェルゼンの前に現れるあたりとか、原作を知らないと違う解釈になっちゃう点があって気になりました。
ただ、見どころを押さえた無駄のないダイジェスト的な作りは、いまの時代に合っていて良かったと思います。
そろそろ植田版以外の『ベルばら』を見たい宝塚ファンとしても実写化に期待したいところ。
劇場版を宝塚で上演ある?
宝塚のスターシステム的にどう?
ただそもそもの問題として、劇場版のベルばらは、女性ふたりが主人公の『マリー&オスカル編』なんですよね。
物語の前半は(赤バラの)マリー、後半は(白バラの)オスカルを中心に、ふたりの友情やそれぞれの恋、革命が描かれているのです。
つまり男役トップが頂点に立つスターシステムの宝塚で、W主演(しかも両役とも女役)をそのまま上演するには無理がある。
そりゃあ龍真咲&明日海りおのトップ&準トップ体制なら実現できたかもしれませんが、そんな複雑な人事はもう御免やで!
なんだかんだ言って
ということで残念ながら劇場版をそのまま宝塚で実写化することは難しいでしょう。
だけど昨年韓国で上演された、”オスカル版”もそうですが、誰を中心にどこを切り取るかでまったく印象が変わってくる作品なので、どう料理するかは演出家次第。
いつか宝塚でも新しい『ベルばら』が見られることに期待したいですね。
韓国版に劇場版に、新解釈の『ベルばら』をそれぞれに面白く観ましたが、けっきょくのところ『ベルばら』の世界によく合うのは、”宝塚歌舞伎”と呼ばれる独特のセリフまわしや所作なのかなとも思ったり。
なんだかんだ言って私は『宝塚のベルばら』が好きなんでしょうね。
さて当日まで知らなかったのですが、来場者記念のポストカードがもらえました。
何種類かあるそうで、今回はオスカルとアンドレのあのシーン。もらった瞬間に赤面したのは私だけではないはず。笑
貴重なカード大切にしたいと思います。