残念な感想!望海風斗主演「マスタークラス」で感じたこと

望海風斗さん主演『マスタークラス』の感想を書こうと思っていた矢先の『エリザベート』発表で、そちらの記事が先になってしまいましたが↓

あらためて『マスタークラス』の感想と、観劇に際し、感じたことを記したいと思います。

望海風斗の新境地『マスタークラス』感想

内容はというと、実際にあった”世界的ソプラノ歌手であるマリア・カラスによる公開レッスン”を舞台化したもの。

舞台上にはグランドピアノと机とイスのみ。出演者の衣装も1着だけですし、当然、せり上がりや盆が回ったりする派手な演出も無し。正直、まったくお金のかかっていない作品です。

がしかし、その質素さが望海さん演じるカラスの ”言葉 ”に集中する上でとても大切なのです。

なんせ分厚い辞書くらいはあるであろうセリフ量を望海さんが地声でけっこうな早口でしゃべるもんだから、こちらも相当な集中力で挑まないと大切なセリフを聞き逃してしまう。

まさに自分がカラス(望海)の講義を受けている感覚。
客席は無人なのかとおもうくらい静まり返り、オペラを上げる音にすら気を使う公演は初めてでした。

そんな空間を”言葉と佇まい”で作り上げる望海さんは本当にスゴかった

極貧の少女時代から努力をかさね世界的デーヴァまで上り詰めた彼女の自信、プライドの高さ、頑固さ、そしていろいろピークは過ぎた中年女性の気難しさが登場の歩き方だけで伝わってきました。

だけど本当のカラスは愛のある人なんですよね。
音楽と向き合う覚悟と熱意、声に魂を吹き込むことを伝えようとするも、褒めて伸ばしてくれることを期待する”今どきの生徒”にそんな泥臭い指導は通じない。

「準備不足!」「帰れ!」と容赦のない言葉を浴びせるカラスに、「自分がもう歌えないからって私の足をひっぱるのはやめて!」と生徒が反論。
ショックを受けたカラスが「今日はここまでにしましょう」といって講義を終わらせて幕。

なんともやるせないラストですが、本当にやるせないのはカラスの人生。

太った見た目のコンプレックスゆえ(お腹に虫を飼うという)過激なダイエットに励んだり、パンか鉛筆かを迫られるほどの極貧生活や理不尽な人種差別と闘いながら、一度は歌手としての栄光はつかんだものの、いまは落ちぶれ、私生活では男に利用され捨てられたカラス。

劇中、望海さんが見せた”カラスと恋人の演じ分け”は見事でした。
【余談】男性を演じるからといって男役声になりすぎていない自然さが良かったです。

そしてここからはネタバレになりますが、望海さんは歌いますよ。しかもオペラのムッチャ難しい歌を情感たっぷりに。それはそれは素晴らしかった。

だけどこの作品の話題はそこじゃない、なんといってもカラスが憑依したとも思える望海さんの演技力です。この役でまた大きな賞が与えられることを期待します。

そんな大感動の舞台なのに、ひとつだけ本当に残念なことが…

外部ミュージカル キャスティング問題

客席が寂しかった。
わたしが観た平日夜公演では1階席が8割、2階席はおそらくクローズしていたのではないかと。
【余談】望海さんが歌わないと知って観劇をためらった人が多かったのでしょうか。

まぁこれだけ毎日なにかしらの公演があるわけですから、表向き全公演完売する宝塚歌劇が珍しいだけで、外部公演はどこも集客に苦労している印象。

東宝版『エリザベート』上演の発表をうけ、(宝塚OG&おなじみの俳優ばっかりと)不満の声が聞こえてきましたが、スタッフ演者が100名以上携わるグランドミュージカルになると失敗は許されない。衣装や道具材料の費用もどんどん高騰してますしね。

チケットの値段もあがり観客側の財布の紐が固くなったいま、(望海、明日海、井上、山崎、古川ら)それぞれにファンが付き、集客が見込めるスターたちをキャスティングするという安全策をとるのは仕方のないことかと。

それにしても公演の規模に関わらず、どんな役にも全身全霊で挑み高みを目指す望海さんの素晴らしさよ。

望海さん渾身の舞台『マスタークラス』にまだ間に合いますので、ぜひひとりでも多くの人に観てもらいたいと思います。

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