月組バウ公演『雨にじむ渤海(パレ)』配信でみました。
評判どおりの良作。韓国歴史ドラマ並みのスケール感と、ただのBLに留まらない深くて緻密な脚本。
そして何より、画面越しでも伝わる演者たちの凄まじい熱演に圧倒されました。
礼華はるの圧倒的進化&彩海せらの巧みさ
そしてとにかく主演の礼華はるさんが素晴らしかったです。
特筆すべきは、その「洗練された所作」。無駄な動きを一切削ぎ落とした「静」の演技の中に、王としての孤独と、ふとした瞬間に漏れ出る色気が共存している。長身から繰り出される殺陣の迫力はもちろんですが、今回は「無表情」で語るお芝居に、彼女の男役としての深みを感じました。これほどまでに洗練された男役像を確立されるとは。ほんと、バウじゃ狭すぎる。
そして、インソンの心を溶かすセウォンを演じた彩海せらさん。
いつもながら彩海さんの技術の高さには脱帽しますが、滑舌よく、どんなに激しい感情の場面でも言葉がクリアに届く歌唱力。そしてインソンを想う真っ直ぐな目線ひとつで、観客の涙を誘う表現力はまさに舌を巻くレベル。今回は男役や女役を越えて、ひとりの役者としてその上手さと存在感が際立っていました。
ただ、男役の経験を積みたい時期の彩海さんに、このタイミングで、あえてヒロイン的な役をやらせる意味がよくわからず。せっかく『ぱるあみ』を並べるならバディ物にしたほうが彩海さんの『男役経験値』は上がったでしょうに。
とはいえ、「BL(ボーイズラブ)」という言葉だけでは括りきれない、人と人が魂で惹かれ合う瞬間の美しさ。それを見事に体現できたのは礼華さんと彩海さんだからでしょう。
脇を固める月組精鋭たちの「確かな芝居」
そして本作がこれほど重厚な人間ドラマになったのは、別格から若手まで、全方位に隙のないキャスト配置があったからこそです。
夢奈瑠音さん(ムクチョル)。物語を締めるのはやはりこの方!執政としての腹黒さ、そしてどこか詰めが甘い絶妙な「人間臭さ」を、副組長としての安定感で見事に演じきっていました。
白河りりさん(クムラン)。切なすぎる……!セウォンへの一途で不器用な愛情が、歌声の美しさと相まって涙を誘いました。単なる「当て馬」に終わらせない、実力派ならではの深い役作りでしたね。
瑠皇りあさん(耶律突欲)。美ビジュアルの中に潜む、切れ味の鋭い悪役っぷりが最高でした!七城雅さん(キョン)。王妃ウンビンへの秘めたる想いを、抑えた芝居で表現。多くを語らずとも、その立ち姿や視線だけで「忠義と愛」を伝える男心にキュン。翔ゆり愛さん(テ・デボ)。下級生ながら、しっかりと役の背景を感じさせるお芝居。月組らしい「芝居のバトン」が、こうして若い世代にも確実に受け継がれていることに胸が熱くなります。
そしてインソンの妻・ウンビンを演じた乃々れいあさん。研3での大役、まさに大健闘でした!
もちろん技術的な課題はまだあるでしょう。だけど、あのパーンとした物怖じしない舞台度胸と思い切りのいい芝居は大きな武器。礼華さん相手に迫力も貫禄も負けていないのが素晴らしかった。
脚本の妙:BLと友情の「絶妙な境界線」
最後に脚本について。
宝塚において、ヒロインをそっちのけで男同士の(きわどい)絆を描くのは、かなりの挑戦作だと感じました。
しかし、今作が多くの人の心に刺さったのは、脚本が本当に緻密だったから。
ポスターからBLのイメージが独り歩きしている印象ですが、そんなことはなく、『国のために死んでもいい人間なんてひとりもいない』というメッセージを主にした人間ドラマに仕上がっていて、全編をとおして見応えあり。
人事に目を向ければ、1学年違いの「ぱるあみ」の並びがこれからどうなるのか気になるところですが、とにもかくにも礼華さんと彩海さんでこの素晴らしい作品が見られたことは本当に良かったです。
千秋楽までインソンとセウォンとして存分に生き抜いてください。