幕末の武士が現代の撮影所へタイムスリップするという驚きの設定で日本中を席巻した映画『侍タイムスリッパー』。
お世辞にも煌びやかとは言えないこの作品が、小柳先生&月組の手にかかるとアラ不思議!
泥臭さと華やかさを併せ持つ「宝塚版」へとみごとに昇華されていて、評判どおりの面白さ。
鳳月杏&風間柚乃の真剣勝負
とにかく主演の鳳月杏さんの芝居センスが光りましたね。
本人は至って真面目に、必死に現代を生きようとしているのに、その挙動の一つ一つに自然と「可笑しみ」が滲み出る芝居の塩梅は、まさに神業。
殺陣やシリアス芝居の上手さは言うまでもありませんが、個人的なツボとして、天紫さんと風間さんが仲良く話しているところに、嫉妬して割り込んでくる可愛らしさといったら!あの表情、たまらん。
トップスターとしての圧倒的な風格と、小動物のような愛らしさを同居させる鳳月さん、ほんと、魅力の引き出し無限ですね。
そして、この作品に、より深みを与えたのが、鳳月さんと対峙する風間柚乃さん。
同じく過去からタイムスリップしてきた武士の役で、人生を悟りきったような器の大きさを漂わせつつ、その奥底に潜む「過去の傷」に苦しむ繊細な表現が秀逸でした。歌もさらに上手くなってて聴き惚れました。
一方で、一幕ラスト、ブラインドを指で下げて外を眺めるだけで笑いを誘ったり、嫉妬してくる鳳月さんを楽しそうにからかったり、風間さんのコメディ好きが顕になってて笑いました。
で、なんと言っても本作の最大の見せ場であるラストの殺陣のシーンが素晴らしかったのなんのって。鳳月さんと風間さんが無言で睨み合い、時間が止まったかのような緊張感。たっぷりと取られた「尺」が、二人の侍としての誇りを際立たせ、役としても役者同士としても気迫に満ちていました。
月組が誇る役者層の厚さ
天紫珠李さんは、真っ直ぐで頑張り屋のヒロイン・優子が本当によく似合う。劇中の服装はアレですけど、フィナーレでは美しいドレスに身をつつみ、しっとりと色気のあるデュエダンを披露。
真っ赤なジャケット姿で圧倒的な「大スター感」を醸し出す錦京太郎役の英かおとさん。コメディセンスはまさに天才的、仰け反り芸や間合いの取り方が完璧の佳城葵さん。
輝月ゆうまさんは流石の存在感。コテコテの関西弁は安定の最高クオリティ。個人的にツボだったのは、若干の胡散臭さが面白い大楠てらさんの世界的な映画監督役でした。あのどデカいサングラスよ。笑
若手で目立っていたのは、美颯りひとさん。冒頭の会津のシーンから若さと無鉄砲さが光る演技で舞台を牽引し、鳳月さんとのデュエットもあり大健闘!雅耀さんの美しさは、立っているだけで舞台を浄化するかのようでしたし、花音まのんさんは和物の所作が非常に美しく、会津の場面に説得力を与えていました。
汝鳥伶さん&組長の『親代わり的存在』や、彩路ゆりかさん、槙照斗さん、天つ風朱李さんの『切られ役仲間』たちも、舞台にあたたかみを与えていて良かったです。
多幸感溢れるフィナーレ
フィナーレは、マツケンサンバⅡではじまり、銭形平次や水戸黄門などの時代劇ソングメドレー。
それを月組生たちが真顔で踊るもんだから、そのギャップに観客としては笑いが止まりません。鳳月さん、風間さん、輝月さん、英さんらのソロ最高でした。
パレードは劇中の服(和装)で締めくくってほしかった気もしますが、早着替えの時間の関係ゆえ仕方がなかったのかな?
笑って、泣いて、最後はフィナーレで盛り上がる。これぞ宝塚の醍醐味。月組のみんなが作り上げた『侍タイムスリッパー』、とっても楽しかったです。