花組観劇、前回のお芝居『蒼月抄』の感想に引き続き↓
ショー『EL DESEO(エル・デセーオ)』の感想を綴りたいと思います。
花組「EL DESEO」永久輝せあの技術力に感嘆
指田先生が引き出す「芝居者」永久輝せあの真骨頂
幕間から客席に流れる鳥の鳴き声、幕間から幕が上がった瞬間から、そこは熱風吹き荒れるラテンの世界。
「花組らしからぬ(褒め言葉!)」ほどのギラギラギトギトとした暑苦しさが新鮮なショーで、組子全員が滴る大汗を拭いもせず踊り狂う姿に、とてつもないパワーを感じました。
見どころは、なんといっても永久輝せあさんの「男役技術」の極致。そして、100期の同期コンビ、聖乃あすかさんと極美慎さんの眩いばかりの並び、『エリザベート』を控えた星空美咲さんの絶品歌唱でしょう。
幕開きは、オルキデア(蘭の花)として登場した4人(聖乃あすか・極美慎・侑輝大弥・希波らいと)の麗しき女装!藤井大介先生では定番の『男役に女役をさせる』演出を指田先生がやるなんて意外な気もしますが、どうやら先生の話しによると性別は不明だそう。いや、どうみても女装なんですけど。。
で、このミステリアスな序奏からのギラギラ熱帯雨林への転換は実に見事でした。
そしてプロローグの「愛はメラメラ」。銀橋で客席を釣りまくる永久輝さん。三白眼を効かせた妖しくセクシーな眼差し、客席にねっとりと手を差し伸べる仕草に、ヒヤ~ッという悲鳴が聞こえてきました。
ちなみにこの日は客席に星組の瑠風輝さんがご観劇で、永久輝さんが瑠風さんのもとへ歩み寄り、瑠風さんの頬を優しくなでるというサプライズが!完全にファン目線で喜んでいる瑠風さん、可愛かったです。
そして私の心に最も深く刺さったのは、路地裏の酒場のシーン(ANJU先生振付)。ジャケットの上着を振り回して粋におどる男役たちのカッコいいこと。
マフィアに扮した永久輝さんのスーツ姿の美しさ、華麗な足さばきはもちろん、タバコを吸う姿も色気があって惚れ惚れしました。
ボス(紫門ゆりや)の女である星空さんとの禁断の愛、響き渡る一発の銃声……。
床に落ちた上着をひろう姿勢で何十秒かフリーズするのですが、その『無音』の芝居が秀逸すぎる。ショーの一場面とは思えないほど引き込まれる物語性。指田先生、永久輝さんの「芝居心」と「男役の技術力の高さ」を本当に分かっていらっしゃる!
100期「聖乃&極美」のシンメトリーという贅沢
注目の聖乃&極美のダブル2番手体制ですが、正直、「そこまで揃える?!」と笑ってしまうほどニコイチ。
最初の女装も二人一緒、海辺のダンス対決、砂漠の場面も猛禽の聖乃vs蠍の極美の対決シーンになっていて見せ場の分量がきっちり同じで、正直、もうお腹いっぱい。
タイプが全く違う二人だからこそ、並んだ時の「新鮮な輝き」は凄まじいものがありますが、本音を言えばコンビ萌えするタイプではないので、つねにニコイチにするのではなく、それぞれが単独でセンターを張る場面も観たかった。
ずっと一緒だと、それぞれの魅力を活かしきれていないような、少し「もったいない」と感じました。
とはいえ、ダブル2番手として大切に扱われているということは、「ふたりとも上げる」という劇団の意思の表れでしょうから、そこは素直に喜びたいと思います。
ショーの構成とテンポ感への本音
一方で、指田先生ならではの「独特の世界観」については好みが分かれるかもしれません。
従来のラテンショーにある、次から次へとスターが入れ替わり立ち替わり、怒涛のように畳み掛ける展開をイメージして行くと、少し単調だと思うかも。じっくり作られていて見応えはあるのですが、とにかくひとつひとつの場面が長くて衣装も変わらないので、だれてしまう印象もありました。後半は歌も少ないですし。
とはいえ『ビオレトピア』と比べると遥かに万人受けする内容になっているので、先生もずいぶん譲歩されたんだなと。
そんな先生の感性があたらしい風を吹かせたのが「エル・クンバンチェロ」でした。これまでやり尽くされて食傷気味のこのナンバーですが、これまでの決まり切った型を破り、歌唱力とリズムセンスが問われる技巧派アレンジになっていて面白い。
『ラ・バンバ』で客席降りはありましたが、ハイタッチは無し。(おそらく”あえて”やらない方針なのでしょう)
中詰のメキシコ祭りは、カラフルど派手な衣装にソンブレロ、さらにはポップなドクロ衣装まで登場するユニークな構成。
ここで空気を一変させたのが、星空さんのソロ。あの透き通るような歌声は、神の啓示のように胸に響きました。いつも歌ばかりの感想になる星空さんですが、表情やダンスに色気がでて、ずいぶん大人っぽくなりましたね。永久輝さんとの湿度高めの絡みにドキドキします。
また、砂漠の場面で歌手に起用された106期の鏡星珠さんの美声!若手ながら堂々とした歌いっぷりに感心。
客席のサプライズと、命がけ(?)のデュエダン
そしてとくに素晴らしかったのが、デュエットダンスです。デュエダンというには歌の分量が多いのも『ひとみさ』に合っていました。
で、まさか大階段で星空さんの膝に永久輝さんが頭を預ける「膝枕」が見られるなんて!
そりゃあ、あの急斜面の大階段での膝枕ですから、おふたりは全身の筋肉をつかって大変でしょうけど、われわれにはリラックスして愛を育んでいるカップルにしか見えないのがスゴイ!客席ウットリですよ。ラストは銀橋で永久輝さんが耳元で何かささやいて星空さんニッコリ。えーっ、何て言ったの??気になる。
冒頭でも永久輝さんが聖乃さんと極美さんに色気たっぷりに耳打ちをするシーンがあり、こういう小洒落た演出たまらん。どんな内緒話をしているのか、お茶会で種明かしトークに期待したいと思います。
エトワールで素晴らしい美声を轟かせたのは、この公演で退団する湖春ひめ花さん。同じく退団の鈴美梛なつ紀さんも永久輝さんと絡む場面があり、指田先生の退団者への愛を感じました。
そして極美さんが聖乃さんと並んで二番手羽根を背負って登場した階段降り。
トップコンビ、ダブル二番手の合計4つの大きな羽根が舞台に並ぶ光景は『圧巻』の一言で、いま私は、宝塚の歴史のなかでも『稀』な瞬間を目の当たりにしているんだという感動がありました。