月組「桜嵐記」大劇場千秋楽感想・ライブビューイング観劇
一点の曇りもない完璧な千秋楽でしたね。
映画館は収容人数半分で客席は一つ飛ばし。
おかげで周囲を気にせず心置きなく泣けました。
珠城さんの大劇場ラストを見届けられて良かったです。
振り返れば2009年月組「ラストプレイ」新人公演。
珠城さんは研2にして2番手(霧矢大夢)の役をあたえられ、大人の男を見事に演じきってみせました。
終演後は珠城さんの話題でもちきり。
「すごい子が現れた。」
新人公演の前日に行われたトークショーで、
5学年上の主演明日海さんのとなりで物怖じせず役の考察をしっかり語り、質問に丁寧にこたえ、締めのご挨拶まで完璧にこなす大物ぶりを発揮。
明日海さんも「りょうちゃんは本当にしっかりしてるね~。」と舌を巻くほど。
でも時折見せる表情やしぐさがまだ女の子で、とても可愛かったのを覚えています。
ご存知のとおり、この新人公演の大成功以降、珠城さんの異例の抜擢が続く。
早くから大抜擢され常に背伸びして舞台に立ち続けないといけない珠城さんに「恵まれている」と一言で片付けるのはあまりに酷。
ご本人もいずれはトップになりたいと思っていたかもしれませんが、まさか9年目にしてこの大役がまわってくるとは想像もしていなかったでしょう。
トップ就任時のインタビューで「私がトップになって喜ばない人がいるかもしれません。」と胸のうちを話されましたが、その時の珠城さんに伝えたい。
「4年後、あなたは大勢の人に愛され惜しまれて大劇場を卒業するよ。その時のお花渡しで『宇宙一かっこいい』と2番手から言われるよ。」と。
でも当時は不安だったでしょうね。
あの時から今までどれだけの辛さや悔しさを一人でじっと耐えてきたんだろう。
元月組トップスター瀬奈さんの言葉を思い出します。
「組の中に3番手の気持ちがわかる人は3人いる。2番手の気持ちがわかる人は2人いる。でもトップの気持ちがわかるのは自分しかいない。だから孤独なの。でも仕方がないの。」
昨日の千秋楽、自分のことでは泣かないけど紫門さんや輝月さんの組替えには涙する珠城さんをみて、こちらが泣けてきました。
なんて尊い人なの。珠城りょう。
「今日は朝から本当に幸せでした。」と珠城さんの口から幸せという言葉が千秋楽で聞かれたのが何より嬉しかったし安堵しました。
組長の言葉にもありましたが、「これからは思いっきり甘えてください。」
東京公演でも組子に囲まれてご褒美のような幸せな時を味わってもらいたい。
そう願わずにはいられません。
お芝居でもダンスでも珠城さんの清潔感をより際立たせるため、絶妙な距離感で寄り添う美園さんの技術の高さにコンビ結成の時から感心しておりました。
歌ってよし、踊ってよし、芝居してよし。
三拍子そろった娘役。
「宝塚が永遠に甘き調べを奏でる場所であり続けますように。」
ご挨拶で美しい言葉を美しい声で発する姿は、何とも言えない透明感がありステキでしたね。
カテコの幸せそうなお顔をみるとこちらも満たされました。
珠城さんと美園さんは近年稀にみるあっさりコンビ。
『ダンス競技会に出場するパートナーのよう』と称された霧矢さんとまりもさんのように、プロフェッショナルに徹する たまさくコンビは千秋楽といえどその姿勢を崩しません。
自分たちのこと(感傷)よりお客さま優先、組子優先、スタッフ優先。
千秋楽ご挨拶やカテコで互いのことについて触れなかったり、インタビューで「朝から忙しくて今日はまだ相手役と話ししていない」とこたえたり、そんな素っ気ない口調や態度がかえって2人の絆を感じさせるという不思議なコンビで愛おしい。
その他の退団者のみなさんも、月組を支えてこられた人ばかり。
楽しかったことばかりでなく、もがき苦しんだことまで正直にお話になる誠実さが、月組のお芝居の深さにも通じるのではないかと思いました。
そして何度もこちらに向かってありがとうございますと言ってくださり、逆にありがとうございます。
関西組としては大劇場ご卒業はとてもとても寂しいですが、東京公演も退団者のみなさんや残された組子のみなさんにとって素晴らしい日々になりますように。