月組宝塚大劇場公演「『応天の門』-若き日の菅原道真の事-」を観てきました。
平安版『名探偵●ナン』とう表現がピッタリ。
推理モノですが最初から悪者がわかっているので、原作未読でも楽しめました。
(以下、正直感想をネタバレ含んで記しておりますので読み進めご留意ください)
月組・応天の門感想
恋愛要素なし
覚悟はしていましたが、月城さん演じる道真にまったく恋愛要素がありません。
いやいやいや、なんともったいない。
『ラッチマン』『幸次郎』『ギャツビー』を見ても分かるように
男の執念や情欲(←生々しい表現スミマセン)を表現させたら天下一品の月城さんに色恋がまったく無い役なんて残念すぎました。
月城さんご自身も語っていましたが「今回この作品を自分がやる意味を考えて挑みたい」
まさしくそのとおりで、
この作品を宝塚でやる意味は?
研14のトップに少年役を当てた意味は?
もちろん月城さん率いる月組に『必ず良い舞台をつくりあげてくれる』という期待と信頼ゆえだと思います。
その期待に応えるように
月城さんをはじめ芸達者でいぶし銀集団の月組には『雅で落ち着いた平安物』がよく合っていて、素晴らしい舞台に仕上がっています。
とにかく上級生から下級生にいたるまで芝居が上手い!!
さすが芝居の月組
まず業平役の鳳月さんの素晴らしいこと。
本当に愛した人とは結ばれぬ運命ゆえあちこちの女で寂しさを紛らわせるプレイボーイを軽やかに演じていて、さすがの一言。
月城さんとのバディを期待していましたが、途中でケンカ別れしてしまうので、思ったよりバディ感は薄い印象です。
そのかわり、互いの存在を通じて『生きる道を見つける』という胸アツな関係が描かれているので、やっぱり『れいちな』最高!ってなります。
鳳月さんはサラッと演じていますが、業平はコミカルとシリアスが両立する難しい役。
新公の一輝さんは大変だけど学びも大きいだろうなと思いました。
帝・千海さんの可愛らしいことといったら…
観劇前までは『退団公演が13歳の帝でいいの?』と危惧していたのですが、長年キャリアを積んできたからこその存在感。壇上で光り輝いていました。
そしてキャラ立ちしていたのが大拙・大楠さん。
180センチのスキンヘッドの大男は迫力満点!
昭姫・海乃さんは女が女に惚れるカッコいい役どころ。
何回「食えない坊ちゃんだよ!」って悪態をついたでしょうか。
最初は冷たく言い放っていたのに、回を重ねるごとに道真(月城)への愛情が伝わってきてニヤニヤしてしまいました。
元経・風間さんは上手い!!以上。笑
悲しい生い立ちゆえ悪に暴走してしまう哀れな男を好演しています。
で、風間さんの歌が難しすぎる。
なのに完璧に歌いこなしていて、もう笑うしかない上手さ。
とくに難易度の高い歌い出だしは必聴です。
常行・礼華さんは命がけで妹を守る兄をていねいに演じていました。
それにしても礼華さんはショーでも大きな見せ場があり推されていますね。
オペラ泥棒は吉祥丸役の瑠皇さん。
才能あふれる弟(道真)とは反対の、凡人で心優しい兄を品よく演じていて好感が持てます。
新公で真ん中に立つ姿がみたいのは私だけではないハズ。
※ストーリーの鍵・兄を藤原家に見殺しにされた恨みから道真(月城)は貴族嫌いになるという流れです。
田渕先生演出に思うこと
大きな月をバックに道真のシルエットが浮かび上がる月城さんの登場シーンは最高にステキです。これぞ神演出!
少人数芝居のバックに映像を用いて華やかに見せたり、和歌を映像でつづる手法はよかったです。
ただ途中、別箱かと思うくらい何の工夫もない暗転がつづいたのはちょっぴり残念でしたね。
はやい段階で犯人(悪役)がこちらに分かるのでストーリーの脱落はありません。
しかしそれゆえ謎解きのワクワクは失われ、途中、中だるみ感が否めないのが惜しい。
道真(月城)、業平(鳳月)、基経(風間)の3人ともに過去エピソードを入れこんだのは賛否分かれるところ。
回想シーンを組子たちに演じさせ、若手に見せ場をつくったのは良かったのですが、
過去を重視しすぎた結果、現在の絡みがサラッと流れてしまったように思います。
原作も未完なので仕方のないこととはいえ、
あそこまで匂わせるなら道真の兄をつうじて繋がった道真(月城)と元経(風間)の関係をもっと深堀してほしかったな~。
続編をやる予定がないのなら続きがあると思わせる終わり方は酷というもの。
ですがこの終わり方こそ(未完)原作へのリスペクトなのでしょうね。
と、初見の正直感想を述べましたが、総評としては、
詰め込み過ぎてイマイチ盛り上がりに欠けるけれど、良い芝居を見たという意味で満足度の高い公演だと思います。
次回は『Deep Sea』の感想と、これまた意見が分かれるデュエダンについても記したいと思います。
長文お読みくださりありがとうございました。