なにかと話題の衝撃作・ミュージカル「コレット」観てきました。
『エリザベート』『エビータ』『レディ・ベス』など、これまで実在の人物を描いたミュージカルはたくさんありました。
がしかし、略奪不倫、W不倫、女同士の体の関係、若いパトロン、そして近親相姦(義息子)と、ここまで性に奔放でスキャンダラスな内容のミュージカルは なかなか無いのではないでしょうか。
しかもその主役を宝塚OGである明日海りおさんが演じたことがもうビックリ!
演出家の熱烈なオファーにより実現したそうですが、明日海さん挑戦しすぎでは!
明日海りお「コレット」感想
明日海りおの挑戦作
正直、東京で観たときは、演劇のようにドロドロ部分を強調したい他キャストと明日海さんの清潔感とのチグハグ感が否めず。
それがキャストミスのせいなのか演出が中途半端なのかモヤモヤが消えず、感想が書けませんでした。
【余談】かつての相手役である花乃まりあさんとの罵倒シーンも当時の凍りついた空気を知る者としては笑えませんでしたし、花乃さん(96期)にビンタさせる場面など宝塚ファンならゾッとするような演出もいたたまれませんでした。
ところが…
1週間後に大阪で観たときにはまったく印象が変わっていたんですから舞台って面白い。
というのも明日海さんが自分の得意な領域(人物像の骨格づくり)にみんなをグイグイ引っ張った結果、
観客の目をスキャンダラスな面にばかり向けさせるのではなく、サクセスストーリーの部分も含めて『一人の女性の生き様』を見せつけることに成功。
みごとに昇華された『女一代記』に、エリザベートを観たあとくらいの満足感がありました。
声の若さ
一本筋のとおった役作りはまさに明日海芝居の真骨頂。
読書が大好きな田舎の少女がものすごく年上の男性と結婚。そんな恋に恋する少女時代も可愛らしかったですし、小説を書くことに出会ってからの覚醒っぷりはまさにコレットが憑依したようでゾクッとしました。
女同士という性の開拓も、義理の息子が19歳になるのを待って関係を持つなんていうビックリな展開も、年上の夫たちからは得られなかったものへの渇望にほかならず。
文章を書くことだけでなく体で表現したいと踊り子に転身したダンスでも、いつだって自由でいたいというコレットの悲痛なさけびが聞こえてくるようで見入ってしまいました。
で、明日海さんのなにが素晴らしかったって、そんな淫らな役を演じても嫌悪感を一切抱かせない天性の清潔感と圧倒的なスターオーラはもちろんのこと、また声が若返っていたことです。
ある番組で井上芳雄さんが韓国の歌の先生に「これからは声を若く保つように努力する必要がある」とアドバイスを受ける場面がありましたが、そんなことは一朝一夕でできるはずもなく、明日海さんの努力にただただ感服。
何年経っても師弟関係
七海ひろきさん(89期)はコレットを慕う男装の麗人。宝塚時代のキメキメの男役ではなく、体の丸みにも声の高さにも女性感が出ていて新鮮。退団しても独自路線で活躍の場を広げている七海さんがどこまでいくのか、これからも応援したいと思います。
同じく同期の大月さゆさんともラブシーンがあって、センシティブなシーンゆえ同期のキャスティングは演出家の配慮かなと。(考えすぎでしょうか)
花乃さんはコメディが好きなんでしょうね。不倫相手として正妻(明日海)にむかって思いっきり喧嘩をふっかけて楽しそうでした。千秋楽のカテコで涙ながらに明日海さんに感謝を伝える彼女をみていると宝塚におけるコンビの関係って何年経っても師弟関係という複雑さがあるんだなと。
そのほかのキャストも個性が強く、最初はチグハグ感が否めなかったものの、そこはみなさん実力あるプロ集団ゆえミュージカルの域を超えて人間関係のドロドロが極まった唯一無二の作品になって良かったです。
話題の衝撃作、気になる方はぜひ配信(2025年9月13日)をご覧ください。
そして次はいよいよ『エリザベート』ですね。
明日海エリザも望海エリザも楽しみにしています。