宙組大劇場公演『宝塚110年の恋の歌』の感想に引き続き↓
今回はお芝居『Razzle Dazzle(ラズルダズル)』の感想を記したいと思います。
以下、ネタバレありで記しますので読み進めご留意ください。。
田渕先生の挑戦!「Razzle Dazzle」感想
古典的すぎるラブコメ
トップに度を越えた悪役を演じさせ客席を静まり返らせた『パガド』に引き続き、宙組公演を担当することになった田渕先生。
ある意味リベンジ作でもありトップの退団公演ということもあり、ものすごく題材に迷ったでしょうね。
正直、田渕先生って『アウグストゥス』『応天の門』『パガド』を見たかぎり、恋愛を描くのが得意ではないのかなと思っていたので、まさかラブコメとはビックリ!
で、肝心の内容はというと、大金持ちのレイモンド(芹香)が気の強い許嫁アビー(天彩)との結婚から逃げるために『週末までに田舎から出てきた女優志望のドロシー(春乃)を振り向かせることができたら婚約解消!』という賭けをする。
とまぁ観る前からオチが読める100年前のアメリカ映画のような古典的な展開。
いいんですよ古典的でも。ただもうちょっと脚本に手を加えましょうよ。
青年の親友である映画スター(桜木)が絡んできて恋のバトル勃発か!とワクワクしたものの、三角関係にも四角関係にも発展せずサラーッと終わっちゃうなんてね。笑
桜木さんはアビー(天彩)への想いを含みもたせた良いお芝居しているんですけど、いかんせん脚本の書き込みが浅くて、これ以上やりようがないのがもどかしい。
【小声】次期体制のことを考えると桜木&天彩をカップルにするわけにはいかない!というのも分かりますが、ラブコメってサブカップルも重要なんですよね。
映画会社の経営問題がいつの間にかサックリ解決しちゃうなんてご都合主義な展開は『ミュージカルあるある』として飲み込めるものの、嫌な予感が的中してしまったのはエキストラたち。やはりエキストラ以外の何者でもありませんでした。
【小声】エキストラたちの出番をつくるために撮影シーン多めという配慮は感じられますが、鷹翔千空、風色日向、亜音有星ら若手スターがいつも3人1組で使われていて もったいないなと。
渦中のトップ退団公演として
がしかし、冷静になって2回目を観てみると、渦中のトップスターの退団公演となると、このくらいライトで内容が無い方が当たり障りがなくて良かったのかもしれないと思うようになったのも事実。
途中、週刊誌に載った生徒の名誉挽回ともとれるシーンや、たとえ公演ができなかったとしても努力し続けるみたいな匂わせ部分は気になるといえば気になりますが、
組子たちの笑顔に包まれた芹香さんはとても輝いていましたし、トップの単独公演にありがちな『恋人と分かれて一人旅立って行く!』という結末ではなく、恋人と結ばれ、再建した会社の社長に就任して社員とともに新たな組織をつくっていくという大団円も配慮なんだと気づきました。
客席降りで組子たちが観客にウインクを飛ばしてアピールする姿を見てると、いろんなことを乗り越えて今ここに立っているだなぁとポロリと涙が。頑張れ!!
キャスト感想
これがサヨナラ公演となる芹香さん。頭のテッペンから爪の先まで男役が板についていて、どの瞬間もカッコよかったです。フィナーレで銀橋で歌う「Filling good」は絶品。
桜木さんとの軽妙で息の合った芝居は、長年いろんな役柄でお芝居してきたからこその安定感。これで ”ききずん”も見納めかぁ。
【小声】トップ退団公演でありながら2番手の方が衣装が豪華という逆転現象が起こっているのは、役柄的に仕方がないとはいえどうなの?
気さくであたたかい大スターという役柄が本人とかぶる桜木さん。チャーミングで健気な清純女子を演じさせたら天下一品の春乃さくらさん。
そしてまさか女役がこんなに上手いなんてと嬉しい驚き瑠風輝さん。わがままだけど悪い子ではない金持ち令嬢役がハマる天彩さん。
エキストラでも存在感抜群の宙組路線トリオ(鷹翔&風色&亜音)と、あらためて宙組の層の厚さを実感しました。
個人的MVPは監督役の若翔りつさんで、舞台から匂い立つような”枯れ専”の色気。映画バカ40年!みたいな頑固な感じが良かったです。
脚本に物足りなさはあるものの、初見でも気軽に楽しめるハッピーミュージカル。
これからご観劇される方は、本編が終わってもオーケストラの演奏は続きますので最後まで楽しんでくださいね。