昨日、花組『GOETHE!!』を観劇して、未だにその衝撃から覚めやらない状態です。
まるで歌の洪水を浴びるような圧倒的な熱量!セリフのほとんどがメロディに乗せられた歌であり、『ロクモ』など、楽曲の力で物語を牽引する演目を彷彿とさせました。
しかし本作の魅力は、その音楽的な迫力だけではありません。
以下、ネタバレありで感想を記します。読み進めご留意ください。
花組「ゲーテ」感想
この作品が単なるゲーテの伝記にならず、体も社会的にも大人でありながら心は未熟なまま恋に執心する「青年期」のみに焦点を絞り、心の葛藤を丁寧に描いているのが良かった。
宝塚オリジナルではなかなかお目にかかれない、プラトニックではない「恋愛関係」というところにも面白さがあり、はだける衣装やラブシーンにドキッとされられることしばしば。ドイツ版と同様に、大きな布をつかったドラマティックな演出もステキでした。
さて、この物語は、ゲーテがまだ親の支配下にあり何者でもなかった時代から、ロッテの存在によって作品が世にでてブレイクするまでを描いています。
若き日のゲーテ(永久輝せあ)は、親のすすめた法律学校に通いながら、文学を志す熱血漢。魅力的な娘ロッテ(星空美咲)と出会い、強く惹かれ合いますが、ロッテには婚約者アルベルト(侑輝大弥)が!一方、ゲーテの学友ヴィルヘルム(聖乃あすか)も既婚者のマルガレーテ(美空真瑠)との恋に思い悩む日々を過ごしていて…
【ネタバレ】 結局、ロッテは家族のためアルベルトと結婚し、ヴィルヘルムは傷心により自死を選びます。そしてゲーテは、失恋と友の死という激しい感情を昇華させ、『若きウェルテルの悩み』という傑作を生み出すのです。
キャストごと感想
永久輝&星空・歌唱力コンビ
ゲーテの永久輝せあさんは、出ずっぱりで歌いっぱなし!ロマンチックな文学青年でありながら、内に秘めた激しい感情を、体全体でぶつけるような絶唱!その熱量と体力に脱帽です。ほんと、劇団に選ばれしジェンヌの底力って凄いですね。芝居的にもポロポロ涙を流したり、相当役柄に没頭されていたと感じます。まさに命を削る熱演&熱唱。まだ二日目なのでスタミナの配分は探り探りの印象でしたが、どうか千秋楽まで体も声も大切に。
ロッテ役の星空美咲さんは、劇中にも「天使の歌声」だと称さるシーンがあるとおり、低音から高音まで淀みなく響き渡る歌声は、まさにそれ!ソロも上手いですが、永久輝さんとのデュエットの素晴らしさよ。彼女の存在が、この作品の音楽的な信頼度を格段に引き上げていたのは確かです。ただ、ロッテが等身大の役ということもあり、お芝居の印象がこれまでと変わらなかったのはちょっと惜しい。
聖乃あすかさん演じるヴィルヘルムは優しく繊細な青年で、物語の悲劇を一手に引き受ける難しい役どころ。失恋の悲しみによって徐々にわれを失っていく繊細な演技はお見事でした。役作りでしょうか、けっこう痩せましたね。スチール通りのシュッとした美貌が悲劇的な役柄に切なさを添えます。
侑輝大弥さん(アルベルト)は、ロッテの婚約者として凛々しさと誠実さを表現し、歌い聴かせる場面でも大奮闘。やっぱり男役の侑輝さんはカッコいいですね。
で、聖乃さんと侑輝さんを見ていて思ったのが、、
逆でもよかった配役
聖乃さんと侑輝さんの役が逆でもよかったんじゃない?ということ。
というのも、婚約者のアルベルトは主人公の恋敵という役どころで歌の場面も多く、番手の視点から考えると、アルベルト役を2番手の聖乃さんが演じる方が宝塚的にはしっくりくるようにも感じました。
がしかし、ヴィルヘルムの悲劇的な死こそが、ゲーテの作品を生み出す物語の鍵となったことを考えると、この重要なキーパーソンを聖乃が演じることに、劇団の深い意図があるのかもしれませんね。
マルガレーテ役に大抜擢の美空真瑠さん(105期)。既婚者の人妻という設定ですが、可愛らしさの中に妖艶さを秘めた雰囲気と、伸びやかでクリアな歌声が役にぴったり。歌も抜群に上手かったですし娘役としての所作も美しく、その才能にビックリ。
そして全観客の度肝を抜いたのが、真っ赤な衣装に身を包み破壊力のある声量で舞台を支配した夏希真斗さん。すごいオーラでした。
高翔みず希さんがゲーテの父として、峰果とわさんがロッテの父として、確かな芝居で作品に深みを与えていました。
そのほかにも多くの下級生にソロがあり、花組生全員が歌って歌って踊って全力投球!
組子が一丸となった熱い舞台に心から感動しました。