花組大劇場公演『蒼月抄』観てきました。
熊倉飛鳥先生の大劇場デビュー作ということで、並々ならぬ気合を感じましたし、何より永久輝せあさん、聖乃あすかさん、極美慎さんという圧倒的なビジュアルの並びは、まさに「眼福」の一言に尽きます。
しかしながら、正直なところ、内容に関しては「期待しすぎきたかな?」というのがマイ初日の感想です。
以下、ネタバレ無しで感想を綴りたいと思います。
『蒼月抄』描ききれなかった「情」
平家物語といえば、夫婦愛、兄弟愛、一門の誇り、そして源氏との戦いが描かれた、壮大な抒情詩。
ゆえに、どこに重点を置いて、いかにラストに向かって『感情の山場』を持っていくか、その手腕が問われるところではありますが、残念ながら、どれもが「点」で終わってしまい、「線」として繋がる前に物語が壇ノ浦へ急いでしまったように感じます。
かつての名作、上田久美子先生の『星逢一夜』や『桜嵐記』のような、登場人物の魂がぶつかり合い、観客の涙腺を崩壊させるまでの「必然性」が、あと一歩足りなかった。
特に気になったのが、戦のシーンとナレーションの多さです。
朝葉ことのさんと天城れいんさんの語り部は滑舌も良く素晴らしいのですが、説明に時間を割きすぎて、生徒さんの「生(なま)の芝居」で感情を動かされる場面が削られてしまったのは非常にもったいない!
「見るべきほどのことは見つ」
知盛が最後に放つこの名台詞。しかし、舞台上で平家の「栄耀栄華」を十分に体感できていないため、その対比としての没落の悲劇性が薄まってしまったのが惜しまれます。
「動けない」トップスターのストレス
そして、トップの永久輝さんが『辛抱役』なのも物語を単調にしてしまった要因のひとつかもしれません。
というのも、知略に長け、兄の宗盛(一之瀬航季)を立てるために一歩引く知盛ですが、「才能があるのに自ら動かない」主人公を、トップスター制度という頂点に立つスターが演じるのは、観ている側としては、もどかしさが募るばかり。
最後の大立ち回りで素晴らしい見せ場があるとはいえ、けっこう長い時間、運命に翻弄され、ただ流されていく姿を見続けるのは、正直、フラストレーションが溜まってしまいました。
聖乃あすか&極美慎『ダブル2番手の制約』
そしてこの公演からダブル2番手として並んだ聖乃さんと極美さんの問題。
おふたりの並びは最強ですが、「同等」を重視しすぎてドラマを分断してしまった感があります。
というのも、前半は聖乃さん主体のエピソード(町を焼き払った重衡の苦悩)、後半は 極美さん主体のエピソード(教経の勇猛果敢な戦い)と完全に区分けされていて、この二人の絡みがほとんどないのは、ファンとして寂しい限り。
せめて重衡が一門への思いを託す言葉は教経のセリフで済ませるのではなく、ふたりの濃密な芝居を銀橋で見せてほしかったな。
聖乃さんは心優しき弟、極美さんは血気盛んな従兄弟。それぞれ役柄ピッタリ!どちからというと、ダイナミックな『動』の演技で場を圧倒した極美さんの方が美味しい役だったかな。いまはとにかく極美さんの勢いがスゴい!
花組の底力に救われる
もちろん良かった点も多々あります!
太田健先生作曲のナンバーはどれも情緒たっぷりで、和物の良さを引き立てていましたし、なんといっても永久輝さんと星空美咲さんのデュエットは絶品!
主人公とヒロインが心を通わせるシーンは最高にロマンティックで、個人的にはここがピークでした。苦笑
希波らいとさんが平家と敵対する源義経という配役、大正解!『DEAN』で極美さんの良い影響を受けているようで、舞台人としてのオーラがまた大きくなって頼もしい。
心優しき長男の一之瀬航季さん、衝撃の風貌で役者魂炸裂の侑輝大弥さん(景時)、出てくるだけで安心感抜群の紫門ゆりやさん(ヒロイン父)ら、みんな芝居が上手い!
なかでもMVPは、永久輝さんの息子(知章)役の美空真瑠さん。ネタバレになるので詳しくは言いませんが、とにかく彼女の見せ場がこの作品の『泣きポイント』なのでお見逃しなく!
戦のシーンが多いので人物の心情が描ききれていないのは惜しいですが、下級生の出番は多く、殺陣の上手い永久輝さんから学べる機会があるのはいいことですね。
期待マックスで挑んだ『蒼月抄』は、ダブル2番手の配慮がモロに出た脚本ゆえ『盛り上がりに欠ける』という印象となりましたが、大劇場デビュー作にして、そんな無茶な要求を受け入れながらもキレイにまとめ上げた先生と、巧みな芝居で底力を見せつけた花組生に拍手を送りたいと思います。
次回は、指田珠子先生のラテン・ショー『EL DESEO』の感想を綴ります。