帆純まひろさん、一之瀬航季さん主演
花組バウホール公演「殉情」
ポスターが公開されました。
お二人の着物姿がカッコ良く
赤い着物の朝葉さんと美羽さんのあでやかなこと。
予想に反して華やかなポスターに、心惹かれますが、
この作品を観るには、すこし覚悟が必要です。(個人的見解です)
(以下、「殉情」ネタバレありで内容記しますので、読み進めご留意ください)
恐怖の名作「殉情」
・「殉情」超かんたんあらすじ
裕福な家の娘・春琴(11歳)は目が見えないが、類まれなる美貌を持ち、楽器の演奏に秀でていた。
ある日、佐助(14歳)が奉公にやってきて、春琴の世話をするようになる。
春琴の美しさに心を奪われた佐助は、気性の荒い彼女に殴られようと怒鳴られようと、一途に愛を捧げるようになる。やがて月日は流れ、ふたりは…
春琴に三味線のバチで殴打され、「うっ」と痛みに耐える佐助。
このシーンだけでも、ひぇ~っ!と血の気がひきますが、
今後の展開は、こんなもんではありません。
春琴は「おまえを嫁にしたい」
と言い寄る男を冷たくあしらい、恨みをかいます。
そしてその男に顔に熱湯をかけられ
大やけどを負ってしまうのです。
熱湯をかける瞬間は描写されていませんが、
春琴の悲痛な叫び声に、想像力をかき立てられ、ブルブル震えるくらい恐怖を感じました。
そして最も衝撃的なのは…
愛する春琴に
「お前には醜い顔を見られたくない」
と拒絶された佐助がとった行動。
なんと、佐助は自分で両目を突いて失明させたのです。
「安心してください。これで、わては何も見えまへん。いとはん(春琴)の顔も見えまへん」
・・・
エグイ話を長々と、すみません。
こういうのが苦手な方、大丈夫ですか?
春琴は佐助との間にできた子供を
里子にだしてしまったり
全体的に救いのない話に思えます。
しかし、名作と言われる「殉情」が
悲惨なだけ、なワケがありませんよね。
日本文学独特の耽美な世界。
目が見えないコンプレックスにより
屈折してしまった春琴の不器用な生き方に、不思議と共感します。
そして佐助の一途な愛に、魂をゆさぶられること必至。
11歳の少女と14歳の少年だった二人が
やがて男女の仲になり
こじれた大人になっていく過程が
とても繊細に描かれています。
ふたりを取り囲む人間模様も興味深いですし、
キャストの演技力を存分に味わえるのが
この作品の醍醐味だといえるでしょう。
内容が内容だけに、人によって受け取り方が異なる、奥深い作品だと思います。
佐助を演じた早霧せいなさんは
作品の受け取り方についてこう話されています。
「純愛は純愛なんですが、最後に自分も目を刺して2人で見えない世界で暮らすということを、観ているときは悲劇的に捉えていたんですけど、実際に自分が演じてみると、佐助は、ずっと恋い慕っていたこいさんと、念願かなって同じ世界になれたということで、最終的にはハッピーな気持ちで終わるんです」
まさかのハッピーエンド説に驚きましたが
究極の愛の結末に、なるほどと納得しました。
帆純まひろ、一之瀬航季に期待
佐助に挑む、帆純さんと一之瀬さん。
献身的に春琴の世話をする佐助は
受けの芝居のように思えますが、そうではありません。
佐助の愛が強ければ強いほど
春琴の心のゆがみを引き出せるので、
じつのところ、物語をリードするのは佐助のような気がします。
そして帆純さんと一之瀬さんに期待するのは、男女の関係になってからの男の色気。
変わらず春琴に尽くすのですが
明らかに関係前とは違う空気をただよわせて…
宝塚の作品のなかでも、もっとも含みのある男女の色気が、匂い立つように舞台に広がります。
帆純さん、一之瀬さんにとって
大きな挑戦になる「殉情」
恐怖を感じるシーンもありますが、
お二人の佐助を見逃したくない気持ちが勝り、観劇を決意しました。
そして、令和の時代に、この作品がどう受け止められるのかを見届けたいと思います。