本日、月組東京劇場公演『Eternal Voice/GRANDE TAKARAZUKA110!』が大千秋楽を迎え、
ついに月城かなとさんが宝塚を卒業してしまいました。
月城かなとの卒業に寄せて
叱られたくない下級生時代
堂々たるトップの月城さんですが、下級生時代は『とにかく叱られないように』と、息を潜めていたというから驚きです。
とは言え、あの美貌ですから隠れられるはずもなく、劇団に目をかけられ 新公3回&バウ主演と路線街道まっしぐら!!
もともと芝居心のある人ですし、真ん中に立つ責任感や自覚が芽生えると、もう無敵!
『星逢一夜』は伝説の新公となり、バウ初主演の『銀二貫』は雪組時代の代表作となり、いま映像で見返しても素晴らしい公演だったと思います。
【小声】新公時代でこのレベルですから、本音を言えばあと1作、月城さんトップで本格和物が見たかったな~
そして月城さんの何が凄いって、下級生時代に思い描いたとおりの理想の自分になって卒業していくところ。
(新公時代)「もっと見たいと思ってもらえるような男役になりたい」
(退団会見)「男役姿をもっと見たかったと思ってもらえて幸せ」
(ラストデー)「辞めても会いたい(見たい)と思ってもらえて嬉しい」
まさに有言実行、舞台人としても人としてもカッコよすぎでしょ。
【余談】当時雪組で切磋琢磨した3人(彩風✕月城✕永久輝)が、短期間とはいえ雪月花のトップとして並んだことも感慨深いですね。
雪組から月組へ
組替え経験者が口をそろえて「新しい組にすぐに馴染めました」と言うなか、月城さんは「私は時間がかかった。その間の記憶はない」と本音をポロリ。
なんて正直な人なんでしょう。
『舞台は演者の内面が出る』と言われているように、
月組の公演を見ると心地の良い安心感に包まれるのは、月城さんの誠実な人柄が舞台に表れるからですね。
【余談】どうしても黙っていられず、タクシーの運転手に「次からはこっちの道を通った方がいいですよ」とアドバイスして鳳月さんを驚かせたエピソードも好きです。(宝塚GRAPH月城✕鳳月対談より)
3番手時代の月城さんは(ベルナルド、ポッキー巡査、フィッツジェラルド、ルキー二など)当たり役を連発!
ちなみに個人的に月城さんの一番好きな役は、大人の色気と包容力がハンパなかった『アンナ・カレーニナ』のカレーニンです。
【余談】この頃のスカステで美弥るりかさんや暁千星さんと仲良くワチャワチャしてるの好きだったな~。
そして月城さんを語るうえで避けては通れないのが、『夢現無双/クルンテープ』(2019)稽古中の大ケガ。
体も心も辛かったでしょうね。
このときばかりは私も舞台の神様を恨みました。(もしこのケガ(の後遺症)さえなければ、あと2作くらいやってくれたのかな~なんて思いを巡らせては、ため息です)
トップになってからは公演ごとに歌唱力がアップし、芝居の求心力も増していき、まさに『芝居の月組』を体現するトップに。
トップ時代で一番好きな作品は『グレート・ギャツビー』ですが、オリジナル作品で大ヒットがないのがちょっぴり残念。
当て書きで、月城✕鳳月✕風間で男同士の友情物とか、月城✕海乃でどっぷり悲恋物とか、見たかったですね。(『万華鏡百景色』の闇市のドンのような、月城さんにしかできない男臭い役もやってほしかったな~)
ショーは名作ぞろいで大満足です。
去り際まで美しい
『フリューゲル』では中心となって前代未聞の多人数役替り公演を成功させ、偉大なトップスターになった月城さん。
見知らぬ組に来て、その組が良くなるためにはどうしたらいいのかを模索し、組子たちを導き、最高の状態で次期へとバトンタッチ。
ラストデーでも自分のことより相手役や後任に配慮し、スタッフやファンへの気遣いを忘れない。
(おそらく)ご挨拶が短めだったのは終演時間を気にしてのこと、他の退団者がトップを持ち上げる発言をしなかったのも月城さんの希望でしょう。
聡明で責任感がつよく、どこまでもプロフェッショナル。それでいてチャーミング。
最後までとびきり美しく尊い姿を見せてくれたので、清々しい気持ちで送り出すことができました。
そしてもちろん卒業後も舞台に立ってほしいけれど、表舞台から身を引く選択をされても受け入れられそうなのは、月城さんが月城さんだからかな。(同じ想いのファンが大勢いるハズ)
あらためまして、月城かなとさん。
あなたの男役姿を永遠に忘れません。16年間本当にありがとうございました。
明日からの新しい人生がこれまで以上に幸多きものでありますよう、心から願っております。