極美慎が大覚醒!花組「DEAN」感想

極美慎さんの組替え後初主演作『DEAN』、観てきました!

半年後でも1年後でもダメで、組替えしたばかりの「今、このときの極美慎✕花組」だからこその空気感を感じる作品。

谷貴矢先生の「孤独だけど、大きな夢への戦いが始まった今」という言葉通り、ディーンの孤高の魂と、新天地で戦う極美さんの存在が奇跡的に重なり、胸がヒリヒリするほどの緊張感がありました。


以下、ネタバレありで感想を記しますので読み進めご留意ください。

極美慎『DEAN』感想

全体感想

物語はディーンの「心の声」と彼が演じるの「台詞」がシンクロしながら進むので、初見だと慣れるのに少し時間がかかる印象。事前にプログラムの映画あらすじを読んでいるとすんなり入り込めると思います。

それにしてもディーンって、相当危うい人物だったんですね。

親と不仲による深い孤独、売れない時期に経験した周囲への不信感。ゆえに指図を嫌い、全てを自分のやりたいように進めたい支配的な性格で、周囲を試すような行動ばかり。恋愛も不器用で、本気で愛したピア・アンジェリは他の男性と結婚。


彼の全ての言動は、1幕ラストのトレンチコートでの「寂しい」の一言に集約されるんですよね。短命なので2幕の展開も切ないのですが、ラストに、夢とはいえ、みんなと心通わせる、宝塚らしい救いのシーンがあって良かったです。

キャストごと感想

極美さんの何がすごかったかって、それはもちろん『演技』なわけですけど、ディーンが、「単なる宝塚的、映画スターを目指す俳優青年」にならず、猫背&上目遣いといった彼の特徴をしっかりと捉えて、ディーンとして存在していたところです。

今までの達観した美しさとは一線を画し、極美ディーンは、痛みや苦悩、愛への渇望を時に生々しい演技で表現していて、熱演というより、ゾーンに入っているというか、役者としての覚醒。

歌は、情感たっぷりとはいかないまでも、紅ゆずるさん仕込みの歌詞が真っ直ぐとどくストロングボイスは路線スターとしての大きな強み。9等身の神スタイルとジーンズ姿、そして真っ赤な革ジャン姿もめちゃくちゃカッコよかったです。

孤独なディーンを囲む個性豊かな面々を花組メンバーが好演。

2番手役(社長ベン)の希波らいとさんの長身スーツ姿は眼福!暗い芝居のムードの中で、彼だけが眩しい「明るい光」みたいに存在感を放っていて良かったです。歌の安定感、フィナーレでセンターに立つ姿の輝きも申し分無し。頼もしい存在になりましたね。

1幕ぜんぜん出てこなくて不安になった一之瀬航季さん(レイ役)は2幕に活躍。ディーンの理解者という役柄が100期ファンにはたまらない。極美さんとの息の合ったコンビネーションで、劇中もあたたかい友情を感じさせてくれました。

天城れいんさんはカメラマン兼、ストーリーテラーとして、ディーンへの愛に溢れた視線で物語をナビゲート。ちょっと後半セリフが上滑りしてしまう箇所があったのが惜しい。

ゴシップを書き立てる冷徹なメディアのトップ(新聞女王)で、のちにディーンの理解者へと変わる美風舞良さんのあたたかな演技がステキ。ディーンの子ども時代を演じた彩葉ゆめさんは出番も多く歌もしっかりあって、着実に経験値を上げている印象。ディーンの才能を導く指導者の紫門ゆりやさん、丁寧に教えたり少し突き放したり、掴みどころのないひょうひょうとした役が本当に上手いな~。

ヒロインのピア・アンジェリを演じた美羽愛さんの清潔感溢れる透明感と可憐さったら。家族思いゆえにディーンの元を去るという選択に強い説得力があり、あのピュアな輝きこそが、世界一孤独な天才ディーンが唯一愛した女性にピッタリだなと。デュエダンでおどりのクセが違う極美さんにピッタリ寄り添う娘役力&ダンス力は流石でした。

気になったこと

上演時間が短めでもフィナーレがしっかり構成されていて、これは嬉しい驚きでしたね。
しかも極美さんがバラを一輪手に取るところから始まるなんてトキめくでしょ。

極美さんの持つ美しさと花組の優美さが重なり、最高の「花男」誕生の瞬間を目の当たりにできるフィナーレだと思います。

【小声】フィナーレで1点気になったことが。紙吹雪が舞台に残ったままフィナーレに突入するので、私が観た回は凛乃しづかさんが滑ってヒヤリ!デュエダンで美羽愛さんが体制を崩した回もあったそうなので、どうかご安全に。

カテコで幕が閉まるギリギリまで客席の白妙なつさんら星組OGに手を振る極美さん、羽立光来さんに手を振る花組生たちがとっても可愛かったです。

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