本日は花組ドラマシティ公演『Liefie』千秋楽を観劇してきました。
2回目のバウ主演『舞姫』の千秋楽では喉をつぶして悔しい思いをした聖乃さんでしたが↓
本日は絶好調!
安定した実力を発揮し、初東上主演をぶじにやり遂げました。
以下、公演の感想をネタバレありで記します。かなり辛口なので読み進めご留意ください。(長文です)
「Liefie」脚本に難アリ
毒にも薬にもならない
生駒先生による完全当て書き『Liefie-愛しい人-』。
悪い人も出てこず、大きな事件も起こらず、不快な表現がひとつも無く、ほのぼのとした作品をつくりたかったというのは伝わってきましたけど、
全方向に配慮して演劇をつくると毒にも薬にもならない作品になってしまうんだなと。
人物設定は良いと思います。
15年前の交通事故で両親をなくしたヒロイン(七彩)、彼女を笑顔にしたい主人公(聖乃)。無器用なふたりは互いを思うがゆえに一歩踏み出せなくて、もう何年も友達以上恋人未満。
そこにもうひとりの幼馴染(真澄)の存在。そしてヒロインの周りをうろつく影のある青年(侑輝)。
これだけ魅力的なキャラを設定しておきながら、なんでそうなる?ということばかり。
まず、笑わない設定のヒロインですが、よく笑います。だから主人公がヒロインを笑顔にするための言葉を探すということに違和感があるんですよね。
つづいて2番手役でありながら1幕ほとんど出番のない侑輝さんの「お待ちかねの悪役の登場だ!」に、これからどんなドラマティックな展開が待っているのかと期待したら、
まさか同じ境遇(両親がいない)のヒロインが皆に大切にされていて嫉妬しただけって、はぁ~?
そこは客席の大半が思った「ヒロインの両親と同じ事故で亡くなったトラック運転手の息子」にしないでどうするよ。
まぁただでさえ主人公の背景がペラペラなのに、2番手役をそこまでしっかり描くわけにもいきませんから、このあたりが妥協点なのかな。
そして主人公&2番手のケンカにもう一波乱あるかも!と期待させておいて、つぎに会ったときには握手して「(名前)で呼んでいい?」って、この甘々な展開なに?お尻が浮きました。
男同士の友情とか好きですし、ふたりとも友情が始まる時のぎこちなさを出すのが上手くて良かったんですけど、もうすこし聖乃さんのオス味が感じられるシーンが見たかったです。
もしかしたらこの作品が聖乃さんの初バウ主演作だと満足できたのかもしれません。
だけど『冬霞の巴里』のヴァランタンや『舞姫』のといった難役を経ての初東上で、最初から最後まで甘々なヒロイン見守り系男子というのは正直物足りなくて。
自分なりのストーリー
いっそ主人公をヒロインの両親を事故死させたトラック運転手の息子にして、2番手役をヒロインを見守る幼馴染に。で、ドロドロの三角関係にしたらどう?いや、もうひとりの幼馴染も入れて四角関係は?(すみません、どこの韓国ドラマって感じですね)
過去にここまで観客の創作意欲を掻き立てる作品があったでしょうか。
私だけでなく、この作品を観た人がそれぞれ自分なりのストーリーを展開させているのが面白かったです。
そして、しどころのない役を懸命に務めた花組生が素晴らしかった。
会場を包み込むようなとてつもない包容力を見せた聖乃さん。大人っぽい演技で心の葛藤をみごと表現した七彩さん。香り立つような男の色気に客席をメロメロにした侑輝さん。
一樹さん(ヒロイン祖父)がことばを発するたびに物語に奥行きが広がりますし、峰果さん(大工棟梁)がこんなに渋くてカッコ良かったなんて大発見だよ。美風さんはコメディ担当楽しそう。
そして鏡さん(新人記者)と初音さん(迷子の子供)ら陽キャラの体当たりの演技に笑った。真澄さん(幼馴染)はサバサバした姉御キャラで好感度アップ。
フィナーレは花男&花娘の魅力が爆発して最高でした。
ヒラヒラと衣装やドレスの裾をなびかせて踊る花組生の麗しさ。宝塚を観たという満足感がハンパなかったです。
それにしても聖乃さんはセンターが似合うな~。ダンスが格段にレベルアップしてどの瞬間も美しくキマっていました。
聖乃主演&生駒先生当て書き&ロマンチックコメディということで、期待が大きすぎていろいろ思うところもありましたが、
観客が不快だと感じることを徹底的に排除して、ほのぼのあたたかい作品づくりにチャレンジした生駒先生の意気込みには敬意を表したいと思います。
次はいよいよ大劇場デビューでしょうか。
たくさんの生徒に役とセリフを与える愛情深い先生だと思いますので、つぎの作品も期待しています。