もともとコミックだった作品を山崎育三郎さんの強い希望で実現したミュージカル『昭和元禄落語心中』。
演出は小池修一郎。出演者は、山崎育三郎、明日海りお、古川雄大の研音トリオをはじめ、中村梅雀、黒羽麻璃央という錚々たる顔ぶれ。
みなさん役がビタリとハマって素晴らしかったですし、やはり小池先生はオリジナル作品よりも原作のある作品をアレンジするのがお上手。
1幕冒頭からクライマックスシーンを見せて観客を物語の世界に引き込む手法も、1幕終わりのキャスト総出のワクワク感もニクイなぁ。
以下ネタバレありで感想を記しますので読み進めご留意ください。
山崎育三郎・明日海りお・古川雄大『昭和元禄落語心中』感想
『昭和元禄落語心中』かんたんあらすじ
物語は昭和初期、同じ時期に師匠に弟子入りした助六(山崎)と八雲(岡田)は、ときにぶつかったり嫉妬しながらも善きライバルとして共に芸を磨いていました。
自由奔放で女たらしの助六とちがい、堅物で女を知らない八雲。
そんな八雲の芸の幅を広げるために師匠(中村)が紹介したのは芸者のみよ吉(明日海)だった。
彼女のおかげで当たり役を得た八雲でしたが、師匠の反対によりみよ吉に別れを決意。
傷ついたみよ吉は助六と行方をくらまし、数年後に謎の死をとげる。
八雲はみよ吉と助六の娘・小夏を引き取り育てますが、小夏は八雲が両親を殺したと思い込み…
サクセスストーリーあり、友情物語あり、ちょいドロの三角関係あり、サスペンス要素あり、芝居と歌のバランスもちょうどよく、3時間飽きることなく楽しめました。
宝塚で上演あり?
終演後に「演出が宝塚っぽいね」「そのまま宝塚でやれそう」「宝塚で観たい!」という声を聞きましたが、完全同意です。(もちろん演出家の例の責任問題を忘れたわけではありません)
とにかくタイプのちがう二人の男性(助六&八雲)が魅力的で、山崎さん(助六)の暑苦しいまでの男臭さ、古川さん(八雲)の涼やかな色男っぷりに惚れ惚れ。
これをトップと2番手がやったら客席悶絶モノだろうな。
原作では悪女味がつよいヒロインもずいぶんマイルドになっていて、トップ娘役がやっても観客に不快感を与えることはないと思いますし、着物やドレスといったファッションも見どころになるでしょう。
明日海さんが登場すると舞台がパッと明るくなるのは流石でしたね。あっ、生々しいキスにはちょっとビックリ。
小夏は娘役2番手にあてればいいし、小夏の恋人・与太郎は3番手にぴったり。
子役たちは娘役の路線候補に、中村梅雀さんが演じた落語の師匠は幹部または専科の十八番芸。
そして音楽を担当したのが花組『アルカンシェル』や雪組『フローズンホリデー』を担当した小澤時史先生ということで、どの曲もステキなんです。
昭和歌謡やブギウギ、三味線ジャズなんかもあって組子総出で盛り上がりそう。
とまぁ1回観ただけで「もしかして宝塚でやるの?」と、宝塚上演が想像できてしまうほど 良い意味で ”イケコワールド 全開”の演出でしたね。
上演するなら何組で?
そして山崎さんをはじめ全スタッフから『Made in Japanミュージカルの代表作をつくりたい!』という意気込を感じた作品でもありました。
この公演を今回限りにしてしまうのはもったいない。
朝美絢さん&瀬央ゆりあさんの雪組か、
鳳月杏さん&風間柚乃さんの月組か、
はたまた永久輝せあさん&聖乃あすかさんの花組か、
宝塚での上演に期待したいと思います。