これがあの月組?全ツ「花の業平/PHOENIX RISING」感想

再演が決まった日から楽しみにしていた名作『花の業平』。

やっぱり良いですね。

そりゃあイマドキの作品のように物語の展開はスピーディーではないですし、暗転も多く、退屈と感じる人もいるでしょう。

だけど名作が名作と言われる所以、、それは舞台から香ってくる ”匂い” なんだなと。

香り立つ名作『花の業平』

名作のポイント『匂い』

もちろん実際の匂いではなく、男女が抱き合うときの甘い香り、男を虜にする若い女性のあざとい香り、男が怒りや野心をむき出しにしたときのむせ返るような体臭、陥れられたと知ったときの冷や汗の匂い。そしてお屋敷や町の匂いまでもリアルに感じられて。。

『花の業平』にしろ『あかねさす紫の花』にしろ、和物の名作と呼ばれる作品には、視覚や聴覚のほかに嗅覚に訴えかけるものがあるんですよね。

キャストごと感想

その匂い立つ色気で客席を魅了したのが在原業平を演じた鳳月杏さん

和物の所作が美しくとにかく雅。
百戦錬磨のモテ男が一途になる様は女性の永遠の憧れですけど、それを見事に体現。号泣芝居グッときました。
一方、久しぶりにあった少女が女になっていてあからさまにドキッとしたり、その恬子(花妃舞音)に情で訴えかけられるとコロッと流されるどうしようもなさもまた色気。
女性だけでなく男性がほおっておけない男という ”天性のひとたらし感” も良かった。さすがの経験と技術、すべてにおいて素晴らしかったです。

藤原高子役の天紫珠李さんは前半の気の強いわがまま娘も良かったですし、本気の恋をして一線を越えてからの業平にしなだれかかる様子が色っぽくて最高でした。

そして風間柚乃さんの迫力よ!
2番手時代にしかできない根っからの悪役をそれはそれは楽しそうに演じていて気持ちがいい。歌もさらに深みが増しましたし和物の所作も美しく無双状態。

そのスタイルの良さでひときわ目立ったのが礼華はるさん。町内の気の良い若者だけどかつては高貴な身分で…という影のある男を ”陰と陽”を使い分けながらの役作りが秀逸。歌も高音の輪郭がハッキリして聞き心地良かったです。

賢く爽やかなお坊ちゃんを地でいく彩海せらさん。鳳月さんや夢奈さん相手の友達芝居も堂々としたもんですし存在感も大きくなりましたね。劇団の期待のあらわれでしょうけど突然の客席降り歌唱にはビックリ!

迫力の悪役で舞台を締めた英かおとさん、町人のバイトは目立ちすぎでは?笑。『こんな友人ほしいNo.1』の安部清行を演じた夢奈瑠音さんはすべてが上品。あけび役の彩みちるさんが登場すると舞台がパッと華やかに。

そして一場面の破壊力に感心したのが花妃舞音さん。甘ったるい「いやよ、いや~、いや」が耳から離れない。こんないじらしく可愛い娘に迫られたら…ね、鳳月さん。笑

夢奈さんから「一緒に旅ができてよかったよ」と餞のことばをもらった一輝翔琉さん乃々れいあさんと ”ほんのりキュン”なシーンもあり男役集大成の芝居が見られて良かったです。

これが月組?『PHOENIX RISING』感想

『PHOENIX RISING』は全ツ使用に少しばかり変更点はありますが、印象は本公演とほとんど変わらず。

がしかし、組子のはっちゃけ具合が段違いでビックリしました。

すきあらば御当地アドリブを飛ばしまくるし、中詰はウィンク合戦。

MooZinG は下級生が競い合うようにギラギラオラオラしていて、これがあの月組?と良い意味で面食らいました。

月組ってつい最近までほとんどアドリブとかしなかったし、客席降りでも目が合っているようで合っていない人が多かったのに今回はバチバチ!!

月組にいったい何が!?

とにもかくにも組子たちが楽しそうで何よりですし、組の雰囲気が良いのが伝わってきてこちらも幸せな気持ちになります。

この公演を通じてたくさんの人に宝塚の魅力を知ってもらえるといいな。

そして月組生みんなが元気に千秋楽まで駆け抜けられるよう心から願っております。

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