2025年の初観劇は天海祐希さん主演『桜の園』でした。
ロシア文学のストレートプレイということで一瞬チケット購入をためらったものの、有名すぎる出演者たちを生で見られるだけでも価値があるとミーハー心で向かった大阪初日。
個性豊かなキャストとケラリーノ・サンドロヴィッチさんのマイルドな演出により、人間の醜さや哀れみといった部分を描きつつも後味の悪さを残さない イマドキな”令和のチェーンホフ”に仕上がっていて観やすかったです。
『桜の園』天海祐希と井上芳雄の登場に?!
ざっくりあらすじ
ざっくりとしたあらすじは、19世紀末のロシア。ラネーフスカヤ(天海)は5年振りに故郷に帰ってきたが、金銭的困窮からお屋敷は競売にかけられる寸前。使用人の息子だったロパーヒン(荒川)がいろいろ助言するが、彼女もその兄ガーエフ(山崎)も現実と向き合おうとはせずに散財の日々を過ごす。
そこに新しい生活を夢見るラネーフスカヤの娘アーニャ(大原)。アーニャと親密な万年学生の青年トロフィーモフ(井上)、たびたび金を借りに来る隣人や主人のことより自分のこと優先の使用人たちが織りなす『桜の園(ラネーフスカヤのお屋敷)の』日常が描かれた作品です。
けっきょくお屋敷がどうなったかは後半で記すとして、まずはキャスト雑感から。
キャスト雑感
とにかく芸能人の存在感ってすごいんですね。派手なアクションもなく淡々と進む話しのなかでもそれぞれの個性が際立っていて、これが演出家から名指しでオファーされる一流の役者かと。
その中でも天海祐希さんの求心力と自家発光力にはビックリ!
貴婦人ドレスに身を包んで颯爽と現れたとき、その神々しいまでのスターオーラに思わず拍手しそうになりました。(隣の席の人も胸元まで手が上がっていて、おぉ同士よ!)
【余談】宝塚時代の天海さんを生で見たことはありませんが、宝塚受験のときの審査員のことば、「お母様、よくぞ産んでくださった」に納得です。
もうひとり違う意味でビックリしたのが、ミュージカル界の(元?)プリンス井上芳雄さんでした。
27歳の若ハゲを表現するために産毛のあいだから地肌が見えているカツラをかぶり、窓から飛び出てくるという衝撃の登場に心臓がとまるかと思うほどビックリしました。
【小声】本人は笑われて楽しいとのことですが、よく事務所がOK出しましたね。
冴えない演技もお上手なので役として違和感はなかったけれど、容姿をイジられる変わり者の万年大学生より、女主人との特別な思い出に淡い恋心をのぞかせながら彼女の養女にプロポーズするやしないやを客席が固唾を飲んで見守るロパーヒンのほうが、いわゆる”真ん中向きの役”だったように思えたのは私が宝塚ファンだからでしょうか。
とはいえプリンスではない井上さんは新鮮でしたし、『演技の幅を広げたい』という彼の挑戦は成功だったと思います。
で、ここからネタバレしますので読み進めご留意ください。
結末は
物語の結末はというと、ラネーフスカヤ(天海)が現実逃避している間に競売の日がきて屋敷は人手に渡ってしまったのですが、そのお屋敷を高値で落札した人こそ、ロパーヒンだったのです。
かつて父親が屋敷の主に虐げらる様子を見ていたロパーヒン。大金持ちになってお屋敷を手に入れ、ラネーフスカヤ(天海)たちの前で高笑いをするシーンがなんとも切なくてね。荒川さんお見事でした!
一方、ラネーフスカヤも慟哭するんだけど、天海さんの場合は悲痛というより過去との決別を意味して前向きな感じがしたんですよね。
劇中何度か言う「わたし馬鹿だから~」も決してそうは見えない。みんながお屋敷から開放されるように最初からラネーフスカヤの手のひらで転がされていたのでは?なんて新解釈が生まれる役作り。アッパレです。
と、ここから正直な感想として、
正直感想
天海祐希 、井上芳雄 、大原櫻子 、荒川良々、鈴木浩介、緒川たまき、山崎一、浅野和之…
キャスティングを欲張った結果、ここまでテレビでお馴染みの顔を並べられると、ところどころ民放ドラマを見ているような錯覚があったのも事実。
だからこそ見やすくて、演劇に抵抗がある人の”入口”としても最適の公演だと思いますし、20センチ横を天海さんが通る客席降りの高揚感ったら。
まだまだ大阪福岡と公演は続きますので、ご観劇される方はどうぞ楽しんでください。