大炎上!オペラグラス禁止&推しカラー服やめて発言に思う

ある舞台の座談会で、「(観劇を)楽しみにしているお客さんに一言」とコメントを求められた演出家が、「あっ、オペラグラスの使用は禁止だよ」と発言し物議を醸しているのをご存知ですか。

オペラグラス禁止発言とその真意に大炎上!

楽天ブックス『推し楽』より

炎上したのは楽天ブックス『推し楽』に掲載されたある演出家と出演者による座談会。

俳優M まずは見に行かなきゃ始まらないので、ぜひ「震度3」に足を運んでもらいたいです。きっと、これまでにない何かを体感できるんじゃないかと思います。

演出家 あ、オペラグラスの使用は禁止だよ。

俳優M あっ、それファンの方に伝えなくちゃ! 「オペラグラスを持ってきたら、割りに行くでー!」……って、いや、それはそれで喜ばれるわ!

演出家 本多劇場は空気感の伝わる本当に素晴らしい劇場です。大阪シアター・ドラマシティも福岡の北九州芸術劇場も、ちゃんと空気感が伝わる劇場を選びました。だから、オペラグラスで(舞台上の)1点だけを見るのではなく、全体を楽しんでもらいたいですね。

俳優M あとファンの方に、今回オレンジ色の服だと上演中に目立つから着て来ないようにってお願いしようと思います。俺のメンバーカラー、オレンジなので目立つんですよね(笑)。

楽天ブックス『推し楽』より抜粋

編集で誇張されている部分もあるかもしれませんが、それにしても不快な発言ですね。

劇場にどんな服を着て行くかも、観劇中になにを見てどう楽しむかも(迷惑をかけなければ)観客の自由。しかもいろんな事情でオペラを必要とする人もいるわけですし、チケットを販売した後に公式ではない場でのこの発言、そりゃあ炎上するのも無理はありません。

公式が『お詫びとお知らせ』と題して「本公演ではオペラグラスのご使用や服装に関する制限を一切設けておりません」と発表したものの、一件落着とはならず、演出家が出したコメントによってさらに炎上することに。

演出かの真意にさらに炎上!

演出家は「どのように観劇されるかは、もちろん観客の自由です」と前置きしながらも、

演劇において、観客の目は、映像におけるカメラだと思ってます。
映像の場合は編集室で意図的にそのカット割り通り(観客に何を見てもらいたいか)を出来るが、演劇の場合はそう簡単ではありません。
そこに演出家(もしくは理解のある役者)の創意工夫によって、観客の目(カメラ)をどこに向けるか、稽古場にて四苦八苦します。
それは例えば先程言った、セリフを喋っている人の視線の移動(それはカメラをパンする意図)や、視線の移動ではなく思い切って観客に背を向けてしまうこともありますし(必然的に観客は周囲を見る)、もっと明解にするなら照明の変化(周囲の者C)にスポットライト的なものを当て「ここを見てくれ」と強引に誘導する場合もあります。
そのカット割りの蓄積の上に、作り手としては、この物語の白とも黒とも言えない抒情を楽しんでもらいたいと(あくまで勝手にですが)思ってます。

~中略~
たまに話題になる事もありますが「客席のくしゃみ一つ」「携帯の着信音一つ」でその稽古場から大切に構築した空気感が壊れてしまうのも事実です。
「そんなヤワなこと言うな」「そうじゃない作り方をしろ」と叱責されそうですが、あくまで作り手はそれぐらい神経をすり減らして作っています。
もちろん生理現象ですし、季節によっては仕方ない時もあります。だからこれも「絶対やめてくれ」と言ってるのではなく、「一緒に作り上げて行く上でなるべく協力してくれたら有り難い」ということだけです。
本多劇場のような劇場なら、今回はオペラグラスを外して、五感を駆使して、想像力を駆使して、生身の人間の発する空気感に溺れてしまうのも、楽しみ方の一つですよ、という話です。

赤堀雅秋プロデュース「震度3」より

オペラで一点ばかり見ないで全体を感じて!という演出家の言わんとすることも分からなくはありません。

だけど舞台はセットや衣装、音響に照明、そして演者が織りなす総合芸術です。

演出家のいうとおりオペラ無しで全体の雰囲気を味わえたとしても、衣装やメイク、セットに小道具など、随所に散りばめられた素晴らしい職人技を見逃すことの、なんともったいないことよ。

オペラ越しに見る演者のまつ毛に色気を感じたり、磨き上げられた芸の極みである”後ろ姿”を愛でたり、スポットが当たらずとも表情を作り込んで役に没頭するキャストを追ったり、セットの壁に飾られた写真に意味を見出したり、衣装の繊細な装飾にときめいたり…

細部に宿る職人技の凄さを感じることが観劇の楽しみであり、その作品をつくる人たちへの敬意だと思っている私にとって、この演出家の考えは驚くべきものでした。

キャパ898席のドラマシティと386席の本多劇場を同じに考えているところとか、他意はないでしょうけどクシャミと携帯を同列に扱うとか、最後の一文「基本くだらないことばかりの作品ですが(笑)」と茶化すところとか、常々いろんな考えを受け入れたいと思ってはいますが、今回はなかなか時間がかかりそうです。ただ、『観せ方、観られ方』へのこだわりと熱意は伝わりました。

こんなカタチで注目される公演となってしまったのは残念だけれど、公式が正式にお知らせを出したことですし、観劇される方はどうぞオペラも服装もご自由に楽しんでいらしてくださいね。

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