今週は連続して宙組観劇。
劇場前には門松が飾られ、芹香斗亜さんの開演アナウンス「明けましておめでとうございます」というお正月バージョンを聞くことができました。
『宝塚110周年の恋のうた』は『ルグランエスカリエ』の和物版だと聞いていましたが、芝居色がつよく好みが分かれるところ。
以下、ネタバレありで感想を記しますので読み進めご留意ください。
チグハグ!『宝塚110周年の恋のうた』感想
経験が物を言う和物
幕開きのチョンパは華やかさというより人数の少なさにビックリしたものの、芹香さんが「恋の曼荼羅」を歌い出した瞬間、そう言えばこの曲で歌唱力の評価が高まったんだよな~と花組時代を思い出して涙が出ました。
そして個人的に大好きな『琴時雨』を芹香さんの声で聞けて嬉しかったな。
【余談】経験が物を言う和物ゆえ、芹香さんの着物のきこなしや所作の美しさはさすが。退団公演で和物のショー(しかも使い回し)なんてと不満もありましたが、組子たちにとって貴重な経験の場になって良かったと今なら思います。
それにしても桜木さんが頼もしい。もともと何でもできる人ですけど、一回りも二回りも大きく見えたのは私だけではないはず。春乃さんもまた歌が上手くなりましたね。進化のスピードに驚きを隠せません。瑠風輝さんの殺陣のかっこいいこと。お芝居では女役ゆえショーでは男役を楽しんでいるのが伝わってきました。
そして次世代を担う若手たちの頼もしいこと。
鷹翔千空&水音志保『若き日の唄は忘れじ』
風色日向&山吹ひばり『星逢一夜』
亜音有星&美星帆那『龍の宮物語』
奈央麗斗&花恋こまち『夢現無双』
いまだに違和感が消えないのは、突然ぶっこまれた”ベストテン風週替りコーナー”です。
ランク入りした曲を着物姿でマイクをもった生徒が歌うのですが、たった1曲なのは何故?ちなみに私が観た回は『川霧の橋』でした。鳳海るのさんお上手!
【余談】背景にスターの千社札(9代目芹香斗亜、8代目春乃さくらなど…)が貼ってあのでチェックしてみてください。
で、神様役の京三紗さんの登場で 一気に芝居モード(いえ、コメディーモード)突入!
しっちゃかめっちゃかだけど…
【あらすじ】藤原定家(芹香)は、恋人である式子内親王(春乃)との身分の違いの恋に悩み、得意だった”恋の歌(和歌)”が作れなくなっていた。そこに未来からきた八千代(桜木)と名乗る俳優があらわれ、彼の一言で”沖田総司”を演じさせられることになったからさぁ大変!はたして定家は再び”恋の歌”をつくることができるのか。
活字にするとストーリーがしっかりしているように思えますが、宝塚110年史のショーなのに鎌倉時代の定家が主役で、そこに昭和のタカラジェンヌ八千代と、テンション高めの神様をまぜたもんだから、しっちゃかめっちゃか。
韓ドラみたいに「御曹司」を連呼したり、突然の「シャネルの5番」もクスッと笑えて面白いものの、新選組、太平洋戦争、琉球と場面がコロコロ変わるので、おそらく宝塚に詳しくない人はなんのこっちゃ!でしょうね。しっとりと名曲を味わいたい宝塚ファンにも不向きかもしれません。
がしかし、とにかく人数が少ない宙組ですから着替えの時間を確保するためにも誰かが舞台に残って芝居をするシーンを入れないことには回りません。
苦肉の策として芝居が多めになったんだろうなと想像できますし、かといって歌やダンスが少ないわけではないので和物ショー特有の退屈さは一切なく、あっという間の50分でした。
トップの退団公演としての演出も充分で、次の世代へと託すセリフを言わせ、満開の桜の下で『花吹雪、恋吹雪』を歌わせて幕というのも胸にこみ上げるものがあります。
お芝居の感想は次回に書きますが、ショーもお芝居もツッコミどころ満載ではあるものの、暗すぎず明るすぎず、重すぎず軽すぎず丁度いい。
先生方の芹香さんへの愛情と組子への配慮が感じられる あたたかい公演だと思います。