宝塚歌劇団に所属する俳優の自死という悲しい出来事から20日が経とうとしています。
沈黙する宝塚OGたち
元タカラジェンヌのSNS
109年の歴史がある宝塚においてOGの数は数千人にも上ります。
その中には退団してすぐにSNSを始める人も少なくありません。
彼女たちのSNSには出演する舞台の宣伝はもちろん、OGが集団で観劇したりパーティーをしたり、華やかな投稿で溢れていて、それはそれは楽しそう。
そして思うのは、皆さんマメですよね。
宝塚公演が初日や千秋楽を迎えるとお祝いコメントを出し、中止になると励ましの言葉。
同期が主演するとお祭りモード、退団者が発表されるとあたたかいエール。
とにかく反応がはやい!
にも関わらず、まるで箝口令が敷かれているかのように、いまだに誰も今回の件について触れないのは何故でしょうか。
告発記事
数日前に集英社から出たある記事が思い出されます。
その記事は劇団の元スタッフが経験したパワハラの実態と、そのころ生徒たちが置かれていた苛酷な環境について書かれていて告発ともとれる内容です。
元スタッフは宙組にも関わって、ヘアアイロンの件で名前があがっていた上級生が(報道がある前から)周囲に腫れ物に触るように避けられていた様子をこう振り返っています。
『今思うと宙組の生徒さんたちの人間関係は複雑で、その上級生も苦労をされていたんだと思う』と。
そう語る元スタッフ自身もとんでもないパワハラにあって退職を余儀なくされました。
しかし退職する際、総務部から投げかけられた言葉は、『(パワハラのことは)誰にも言わんとってな』。
そしてさらに驚くべきことに、外部に恨みつらみを話しそうなスタッフには退職時にボーナスを払ったり、口外しないよう念書にサインをさせることもあったのだとか。
OGが沈黙する理由
OGが退団時に念書にサインをさせられたのかは分かりませんが、
『団内で起こったことを外部の人に話すことはご法度』という徹底された環境で育った彼女たちにとって、こういうときに口をつぐむということは当たり前のことなかもしれません。
しかしそんな中、ひとりだけ赤裸々に思いを語ったOGがいました。
OGのことば
5年前に退団したあるOGのインスタライブ(アーカイブはすぐに消しますとのこと)は、タカラジェンヌ目線で語られた貴重な内容でした。
彼女が後輩たちに思うのは、コロナ禍前から組全員で団結して舞台を作り上げることを知っている上級生と、人と触れ合うことに慣れていない下級生の間に温度差があるのではないかということ。
OG「公演が通常どおり行われることになって『団結せねば』と焦る上級生も、わけが分からず戸惑う下級生も、どちらも苦しい思いをしているのは事実。上級生は下級生を責めないでほしいし、下級生も上級生を責めないで」
現役生の苦しみや悲しみに寄り添うようなOGの発言は胸にくるものがありました。
そして話は今回の件へと続きます。
OG「みんなで悲しんで、みんなで悲しみを共有して、一生忘れないで胸に刻んで生きていくこと。失った命を忘れないことが大事。悲しみは全員で一生抱えて生きていく。ときどき黙祷したりみんなで手をつないでコミュニケーションとることの大切さを話し合ってほしい」
そう熱く語る彼女のところには「OGがしゃべるな!」という心無いことばが届くらしく、そいう意味においてもOGたちが言葉を発することの難しさを痛感。
人の命がかかっていることだけに慎重になるのは当然です。
ただ、劇団に長年の膿を出すことが求められる今、OGたちの勇気ある発言が必要なときではないかと思います。