宝塚OGが多数出演している『刀剣乱舞〜禺伝〜』の感想を遅ればせながら。
初演時は「女性が刀剣男士を?」なんて声もありましたが、蓋を開けてみれば、そこには男役という芸を究めた者にしか出せない、とんでもなく雅な『源氏物語』の世界があり、ゲームファンをも魅了した印象。
そして今回の再演では、各々の芝居がさらに深まり見応えが増したと同時に、撮影OKなシーンもあってエンタメ作品としても上々!
『刀剣乱舞 禺伝』の世界観
物語の舞台は、歴史改変を狙う敵によって、フィクションであるはずの『源氏物語』が「現実の歴史」として動き出してしまった平安の世。
この「矛盾」を正すため、刀剣男士たちが送り込まれるわけですが…
末満健一さんの脚本が、もう…天才的!
ゲームをやったことのない私は『刀が擬人化』されていることに最初は頭がこんがらがりますが、それでも宝塚でお馴染みの『源氏物語』ゆえ、置いてけぼりになることはありませんでした。
光源氏という一人の役を誰かが独占するのではなく、物語の展開に合わせてキャストが入れ替わり立ち替わり「光源氏」を演じる妙。
瀬戸かずやさんの、正統派でまばゆい光の君。
そこからバトンを繋ぐ面々が、それぞれの個性を生かした源氏を魅せる。
一見パニックになりそうな仕掛けですが、一切混乱せずストーリーが進むのは流石。宝塚で培われた「役を生きる力」が、刀ステの複雑な構造と完璧にマッチしていました!
それにしてもみなさん現役時代を上回るカッコ良さ!
キャスト感想
雅さと狂気が共存する「美しき先導者」
歌仙兼定役の七海ひろきさんは、まさに「雅」そのもの。でも、内側に秘めた激しい気迫、偽りの物語に翻弄される苦悩の表情は繊細で美しく、本当に素晴らしかったです。
大般若長光役の彩凪翔さんは、現役時代に培われた、あの鼻に抜けるような甘い声と、流し目の破壊力が健在!派手な装いを完璧に着こなし、余裕たっぷりに戦う姿は、まさに大人の男役の極み。殺陣の合間に見せる不敵な笑みに、客席のあちこちから吐息が漏れていました。グッズもよく売れていたような…
大倶利伽羅役の綾凰華さんは、馴れ合わない孤高のキャラ。殺陣のキレが凄まじく、あんなに細身なのに、重厚な太刀筋を見せるギャップに、現役時代の瑞々しい男役姿を思い出して胸が熱くなりました。
山鳥毛役の麻央侑希さんが現れた瞬間の圧倒的な等身バランスに「ひえっ…」と声が出そうに。まさに「カシラ」の風格!そのダイナミックな華やかさは、広い舞台でも一切霞みません。
南泉一文字役の汐月しゅうさんは、猫のようなしなやかさと、どこか影のあるクールさが絶妙!一文字則宗との掛け合いで見せる少し反抗的で、でも忠実な絶妙なニュアンスは流石。
一文字則宗役の澄輝さやとさんの品の良いこと。飄々としながらも、一言一言に重みがあって、ファンタジー強めの作品にリアリティをもたせていました。
そして、個人的にお久しぶりの舞羽美海さん。相変わらずのお美しさ!指先の角度一つで、舞台に気品の魔法をかける。これぞ宝塚の娘役力!瀬戸かずやさんと休演日に仲良く花組を観劇されていたエピソードも微笑ましくて、絆の深さを感じました。
宝塚ファンとゲームファンの融合
舞台も素晴らしかったけれど、今回、何より素敵だったのは、2.5次元ファンと宝塚ファンの融合を目の当たりにしたこと。
全く違う文化を持つ二つの層が、お互いの流儀を尊重し合って作品を愛でる空間。グッズ売り場の大混雑や、カテコ動画OKという慣れない企画にも、双方がマナーを守って喜びを分かち合う、最高にハッピーな観劇体験でした。
OGたちが卒業後、単に「女性役」に戻るのではなく、「男役としての身体性」を一つの武器として活躍する。 これは宝塚にとっても、卒業生にとっても、新しい道を切り開いた素晴らしい成功例だと感じました。