本日、花組東京劇場公演『アルカンシェル』が大千秋楽を迎え、
ついに柚香光さんが宝塚を退団してしまいました。
いまはフェアウェルパーティーでファンとのお別れを惜しんでいる頃でしょうか。
柚香光の軌跡
やんちゃな下級生時代~花開いた2番手
舞台のどこに立っていてもパッと目を引くビジュアルとセンスの良いダンスで、
下級生時代から抜擢続きだった柚香光さん。
それもそのハズ、音楽学校の最終試験のときにはすでに『すごい子が出てきた!』と先生たちの間で話題になった逸材ですもの。(歌劇柚香光サヨナラ特集参照)
だけど演出家や劇団の期待が大きければ大きいほど与えられる役の壁は高きくなり、
退団のご挨拶でもあったように
「自分のことが好きとは言えなかった」という時期が続いたのかもしれません。
個人的に柚香さんの好きな役をあげるとすると、
『ポーの一族』のアラン
『はいからさんが通る』の伊集院少尉
『金色の砂漠』のデオドロスなど、
有名どころはもちろんですが、
いちばん心に残っているのは
『カリスタの海に抱かれて』のナポレオンなんですよね。(少数派でしょうか。笑)
だってこの役が柚香さんのやんちゃっぷりを堪能できた最後の役でしたから。
「準備がいいね!あははっ!」とマイクいらずの大声量で高笑いする柚香さんの自由なこと。
明日海さんにアドリブを仕掛けられてアタフタする素の柚香さんが見られたのも楽しかった思い出です。
『カリスタ』以降は、
『ベルサイユのばら』のオスカル
『新源氏物語』六条御息所
『ミーマイ』ジャッキーと娘役の大役がつづき、
否が応でも自身が苦手とする歌と向かわざるを得ない日々。
いまとは違って当時の指導は相当厳しかったでしょうし、3番手でありながら新公主演もやって大変だったと思います。
この頃かな、柚香さんって本当は繊細で傷つきやすい人なのかなと思ったのは。
素直な人だからこそ、演出家や上級生はもちろん、いろんな外野の声にも心が反応してしまうんでしょうね。
だけどコツコツと努力をつづけ、技術がともなってきたころ、
繊細な内面は役に奥行きを与える武器になり、
自身の代表作となった『はいからさんが通る』で芝居も歌も手応えを感じることができたのでしょう。
2番手時代にはつぼみが開花し、その活躍は目を見張るものがありました。
個人的な自慢としては2018年博多座公演のショー『Sante!』で、3公演連続、柚香さんとグラスを合わせて乾杯してもらえたこと。(あの小さくて美しいお顔を間近で拝めて幸せだったな~)
で、地方公演ゆえでしょうか。
客席降りで大汗をかいている柚香さんを心配して、後ろの席の人が「だいじょうぶーっ?」と声をかけたんです。
ビックリしている周囲をよそに、
柚香さんはニコッと笑って「ありがとうございます。頑張ります!」と返していて、
なんて誠実な人なんだろうと。
一時代を築いたトップ時代
トップ時代は柚香さんのビジュアル力が最大限に活かされ、先行画像やポスターは傑作ぞろい。
とくに『アウグストゥス』のポスターのビジュアル好きだったな~。
柚香さんの出版物が発売されるたびに、ついついキャトルで散財してしまった人も多いのではないでしょうか。
そしてひとたびセンターで踊れば、誰もがその一挙手一投足に心を奪われる唯一無二のダンサー。
衣装の裾をあんなに美しくなびかせながら踊る男役を見たことがありません。
そして自分の裾だけでなく娘役のドレスの広がりにも注意を払い、相手役を美しく見せようと心を配りながら踊っているのですから、感動ものですよ。
それにしても立派なトップさんになりましたね。
コロナ禍で自分自身も苦しい思いをしているのに、組子たちひとりひとりを気にかけ、愛情を示し続けてきた柚香さん。
そんなあたたかで器の大きなお人柄が舞台にも表れ、包容力のあるステキな男役さんに。
柚香さんにはこれまでどれだけのトキメキと感動を与えてもらったか知れません。
柚香さん率いる花組の公演って、宝塚を見たという満足感がスゴイんですよね。
来世はもずくですって??
いえいえ、ぜひ来世も宝塚に入って男役を極めてもらいたいと思います。笑
最後になりましたが、花組28代目トップスター柚香光さん。
あなたの男役姿を永遠に忘れません。
15年間本当にありがとうございました。
明日からの新しい人生がこれまで以上に幸多きものでありますよう、心から祈っております。