正直感想!宙組「カジノロワイヤル」

カジロワ正直感想 宙組

前回、宙組『カジノ・ロワイヤル』初日を観劇された人の感想をまとめた記事をアップしたので、↓

気分が盛り上がった状態で3月16日の貸切公演を観てきました。

自分の目で観た感想は、ずばり!

期待しすぎた、でした。

以下、ネタバレありで正直に感想を記しますので気分の良くない内容含みます。読み進めご留意ください。(長文です)

宙組『カジノロワイヤル』正直感想

海外をギャフンと言わせる?

「海外で、日本で『カジノロワイヤル』を上演することが話題になったんですが女性がボンドを演じると聞くと冷めた反応で(悔しかった)。また話題になるようギャフンと言わせる脚本をかきたいと思っています

小池先生の意気込みに「すごい大作になるに違いない」と期待が高まりました。

しかし作品の内容が重厚さや感動にベクトルが向いたものではなく、

「ネバセイで充分すぎるほどどっしりした作品はやったので『トンデモボンド』という娯楽作にしようと思う(意訳)と座談会で語っていてビックリ!

それでも『トップ退団公演×小池修一郎演出』の組み合わせに期待は高まるばかり。

ところが観劇してみると…

1本物あるある

幕開きからつづく人物紹介や関係説明(歌もふくむ)に不穏な空気がただよい、悪い予感は的中。

1幕はほぼ人物紹介でおわるという『1本物あるある』そのまんま

ソ連、アメリカ、フランス、イギリス…
SPY関係者だけでもゴチャゴチャしているうえ、

・相続でもめているロマノフ家の人々
・学生運動のリーダー
・ナイトクラブの歌手

・胡散臭い科学者
などなど、個性豊かといえば聞こえはいいですがキャラが中途半場な人物が多数登場。


ストーリーは単純なのに『007』にこだわるあまり登場人物が複雑化。ただのSPYモノにして敵と味方をスッキリさせてもよかったのになと。
(ただ、真風さんの超絶カッコいいボンドを目の当たりにすると、先生が『007』にこだわった理由が充分すぎるくらい理解できます)

孤高の存在であるボンドをはじめ、登場人物はみんなそれぞれ自分の欲や仕事のために淡々と動いていて

『スカピン』や『オーシャンズ』のように仲間と共に目的を成し遂げる…という連帯感がないのはトップのサヨナラ公演として寂しく感じました。

肝心のカジノのシーンもダンスを入れて工夫しているものの、単調で長く感じてしまって。

なので小池先生作品の醍醐味でもある 『一幕終わりに登場人物が勢ぞろいする高揚感 』も低め。

『まかキキ』集大成なのに

小池先生は海外ミュージカルを宝塚に当てるのはお上手なのに、オリジナル作品は生徒の良さを見せようとするあまり脚本自体が弱くなってしまう傾向があったのを思い出しました。

芹香さん演じるルシッフルは原作では小物のワルですが、それではつまらないと世界征服をたくらむラスボスに変更したのはグッドです。

しかしルシッフルの計画はすべてが中途半端でラスボス感は弱く、ボンドとも因縁のライバルという深い関係ではなく偶然出くわせた敵のひとりで肩透かし。(原作未読です。二人に因縁があればスミマセン)

しかもルシッフルを葬るのがボンドではなくイリア(鷹翔)というまさかの展開にズッコケました。
(『まかキキ』集大成なのにラストがイマイチ盛り上がりに欠けたのはもったいなかったな)

で、次期トップスターを崖から落としてそのままだなんて…

もうひとひねりあると思ってましたよ、小池先生!(まぁ、だからといってルシッフルが実は生きていたってなると『シャーロックホームズ』のモリアーティそのまんまですしね)

SPY作品の意外な欠点

SPY作品を舞台化するにあたり意外な欠点を見つけてしまいました。

銃で撃ち合うシーンが見せ場のひとつですが、

銃撃戦って動きが小さいので舞台でみると意外と地味なんですよね。

だれがだれに向かって撃っているのか分かりずらいうえ、その弾が当たっているのかハズレているのかも瞬時に判断できず、ただ効果音だけが響くという。

観劇した席が2階席の末席だったのもありますが、銃撃戦にハラハラできないのはSPY作品として致命的だと感じました。(席によって印象が変わると思います)

2幕後半にボンドとルシッフルがサーベルをつかう直接対決は迫力があって良かったです。

イルカソング

突然のキスから始まるボンドとデルフィーヌ(潤花)の恋は、ベタなドラマみたいだと思いつつトキメキました。

(小池先生って『アデューマルセイユ』の忘れ物キスといい、『All for One』の壁ドンといい、こういうベタな演出好きですよね。私も好きです)

それにしてもふたりの距離がちぢまる曲がイルカソングって!!

♪「イルカは知性がある~音波を出して危機を知らせる~おぼれた子供を助ける~」

この曲は芹香さんの歌唱指導でも歌われ、「危機」と「キキ」をダジャレと捉えた客席から笑いがおきていました。

歌詞のインパクトゆえ独り歩きしている『イルカソング』ですが、本来は世界平和を願うマジメな曲。ほかにもっと違う使い方があったでしょうに。

一本物じゃなくても

そう、全体的に『カジノロワイヤル』は宝塚ファン向けというより、宝塚初心者に楽しんでもられる作品なのだと思います。

真風さんの退団公演だと過度に期待すると「1本物じゃなくてもよかったのでは」と物足りなさを感じますが、

気軽に見られるエンタメとしてはまあまあです。

(宝塚ファンを意識したパロディは賛否分かれるところ)

救いは、とにかくボンドを演じた真風さんが素晴らしかったこと。

たばこのふかし方、スーツの着こなし、キスのバリエーション…

下級生が真風さんが17年培ってきた『男役の美学』を学ぶには良い公演だと思います。

寿さんをはじめ退団者の良さが引き出された演出も多くありますし、

『退団者の見せ場』がそのまま『若手の学び』につながる作りに 座付き演出家ならではの深い愛情を感じました。

次回の観劇からは『考えるな感じろ!』の精神で、今しか観られない宙組の舞台を存分に楽しみたいと思います。

次号はキャストごとの感想を綴ります。

長文、最後までお読みくださり本当にありがとうごさいました。

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