月組東京公演『応天の門/Deep Sea』
ラッキーなことに最前列という超神席で観劇して参りました。
大劇場を経て東京ではさぞかしお芝居が深まっているかと思いきや!
そうでもありませんでした。
ということで感想を記したいと思います。
月組最前列感想「応天の門/Deep Sea」
五感で味わう最前列観劇
そりゃあジェンヌと自分の間に遮るものがない最前列観劇は最高でしたよ。
すぐそこに月城さんが、海乃さんが、鳳月さんが、いるのですから。
言うまでもなく皆さん本当に美しい。
衣装が擦れる音やコロンの香り、銀橋をとおるたびに感じる風…
視覚だけでなく五感で味わう貴重な体験となりました。
「Deep Sea」は安心?物足りない?
チョンパ前の真っ暗な中、ワサワサワサ~ッとプードル衣装が擦れる音にキタキタキターーーッ!!
「熱狂~的なアモ〜ル!!」
ギャーッ!月城さんの生声が聞こえる~と大興奮!!
銀橋渡りが多いショーなのでジェンヌさんの笑顔を間近に浴びてとっても幸せでした。
ショー全体をとおしての感想は『ラテンショーなのに暑苦しさがない不思議!』です。
退団する組長や千海さんはムーディーな歌で酔わせたあとは『踊り納め』とばかりに出ずっぱりですし、
風間さんはソロのあと花道で「暑い、暑いよ~」と手をうちわのようにして仰いで汗だくアピール。
下級生たちも出番が多く、踊ってるか着替えているかで汗が止まる時間がないのでしょう。
パレードのころには首のドーランが剥げて白肌が見えてしまっていました。
そんな大変なショーなのに『暑さ』も『熱さ』も『圧』も感じないのは、
ポイントを押さえたダンスで緩急つける月城さん、ひょうひょうと男役娘役をこなす鳳月さん、どんなときも涼しい顔の海乃さん…
真ん中の3人が醸しだす『余裕という名のペース配分』(悪い意味ではありません)と、
もうひとつは、どのシーンもストーリー性を重視しているところだと思います。
とにかく熱く盛り上がろう!という従来のラテンショーではなく、月組らしく各場面ごとにしっかりストーリーを構築するという堅実なつくり。
ラテンショーにおいてそれを『落ち着きがあって良い』と感じるか『おとなしくて物足りない』と感じるかは観る人によると思います。
娘役2番手はだれ?
エトワールはきよら羽龍さんでした。
大劇場の千秋楽よりも声の伸びがよくなり、自信に溢れていました。完全復活おめでとうございます。
で、やっぱり疑問に思うのは娘役2番手って誰??ということです。
彩さんか天紫さんかということになるのでしょうが、どっちつかず。意図的に分散されているような印象を受けました。
海乃さんのあとを継ぐのは彩さんでも天紫さんでもないということなのか、それとも、
月城さん(道真)の意味深なセリフのように「あなた(昭姫=海乃)にはまだまだ働いてもらいますからね」ということなのでしょうか。
いずれにせよ先が見えない月娘たちにとって、役替わりエトワールで上げられたモチベーションがどこまでもつのか。
「応天の門」芝居がこなれて浮かび上がったもの
『応天の門』に関しては、最前列だからといって特別感動したワケでもなく惹きこまれたワケでもありませんでした。
トップから下級生にいたるまで役に徹するプロ集団なのが月組。
ゆえに冷静な芝居運びでストレスなく物語が入ってくるのですが、感情を揺さぶられるようなものはなく。
ですがこれは演者のせいではなく、書き込みの浅い脚本にあるのではないかと。(先生のせいにしてスミマセン)
兄を殺された道真の怒り、高子と引き裂かれた業平の感傷、キレモノゆえ捨てられた基経の苦悩。
それぞれもっとエモーショナルな描き方ができただろうに、勿体ない。
というふうに、芝居がこなれてくればくるほど脚本の弱さが浮き彫りになるという残念なことに。
とはいえ個々に焦点を当てれば、光月さんの貫禄ある義房、千海さんの光り輝く帝はラスト公演にふさわしいですし、
月城さんや鳳月さんと堂々と渡り合った礼華さんは新境地を開き、蓮さん、天紫さん、英さん、彩さんら中堅どころの芝居も光り、
瑠皇さんら子役の使い方も見事。配役の妙には感心しました。
で、なんだかんだ言いながらも最前列の多幸感はすごくて、たくさんのジェンヌさんと目が合い、微笑みかけられ、天にも昇る気持ちで劇場をあとにしました。
本日はいよいよ新人公演ですね。成功祈っております。