今年の3月で宝塚を退職された
上田久美子さん脚本の舞台「バイオーム」
配信視聴しましたので感想を記したいと思います。
ネタバレはなしですが、後半すこし辛口ですので
気分を害するおそれがある上田さんファンは読み進めご留意ください。
「バイオーム」感想
キャスト配役
花總まり ・母と黒松
中村勘九郎・男の子と女の子
古川雄大 ・庭師とバラ
野添義弘 ・元大臣と盆栽
安藤聖 ・セラピストと竜胆
成河 ・父とセコイア
麻実れい・家政婦と黒松
ある政治家の家族とその庭に生息する植物の物語。
朗読劇というよりは「ストレートプレイ」に近い演出で、キャストは台本を手にしていますが暗記されているようです。
ひとり二役(人物と植物)の演じ分けが、みなさん上手すぎる。
さすが超一流の舞台人たち。
家のなかで孤立する母親とかわいい植物を演じた花總さん、
8歳の男の子と女の子を演じた勘九郎さんがとくに素晴らしかったです。
上田久美子さんについて
上田さん宝塚退職時のインタビュー。
「現実の問題をスルーして夢の世界にひたりたいという感覚がなくなってきたし、人に提供することがいいこととも思えなくなった。宝塚にいるとそれが仕事として求められるし、それを目当てにお客さんが来ることはわかるのでつくりました」
・月雲の皇子 ・翼ある人びと
・星逢一夜 ・BADDY ・桜嵐記…
上田さんの宝塚作品は評価の高いものばかり。
われわれのニーズに応えて作品をつくってくださり感謝しています。
そして宝塚から解き放たれた彼女が
「バイオーム」でどれほど尖った作品をつくるのかと期待していました。
しかし、
「バイオーム」は、政治、家族、性、死など、
現代社会をあらわしているようで昭和の昼ドラのような分かりやすいドロドロ。
予想に反してベタな内容に拍子抜けしたというのが正直な感想です。
さらに残念だったのが「バイオーム」の中に
宝塚ではやれない清くない、美しくない、正しくないことを全部詰め込みました感がアリアリなところ。
退団した男役さんがスカートを履くように、
娘役さんがバッサリ髪を切るように、
いままで出来なかったことをやってみたいという上田さんの意欲が伝わりすぎて…
(というわけで、これからアーカイブ視聴される方は
一部、宝塚作品では見たことないくらいエグイ表現や強い言葉がありますので、お気持ち整えてからのご視聴をおすすめします)
数年前のコラム一文。
上田「ヒロインに共感できないなどと最新の感覚が最良であると信じこんで批判する前に、ジャンキーな娯楽を与えられ続けてネット漬けで想像力も弱り果てた結果、いささか舌がバカになってしまった味音痴の時代なのではと疑ってみたいところだ。」
当時、上田さんのパンチの効いた言葉に衝撃をうけました。
考えたこともありませんでしたが、宝塚を観るときに『共感グセ』がついてしまっているのは事実だなと。
登場人物に共感するだけならまだしも、演じているジェンヌさんにまで感情移入するという二重共感。
とくに「桜嵐記」は正行と正儀に共感したうえ、去りゆく珠城さんと跡を継ぐ月城さんの関係性にも涙しました。
悔しいですが、やはり共感しやすい作品が好きなのだなと再確認。
「バイオーム」
上田さんがあえて描いたであろう共感できない人物や、
観終わったあとに後味の悪さがいつまでも胸につかえるのも、狙いどりでしょうか。
宝塚時代と同じく、作品から受ける印象を誘導されているような気がします。
そういうところ、うまいなぁ~。
ですが、あまりにもハマり過ぎるキャスト、
てんこ盛りの醜悪、説明セリフの多さ、どこかで知ったストーリー…
かなりエンタメ要素がつよくて、
上田さんが本当に作りたかったものはこれじゃないような印象をうけました。(個人的感想です)
これからですね。
1年間フランスに留学されるそうですので、もっともっと自由度が高まるといいなとおもいます。
帰国後の作品を心から楽しみにしています。