雪組東京劇場公演『Lilacの夢路/ジュエル・ド・パリ!!』大千秋楽、配信で視聴しました。
代役という困難をみんなで乗り越え 東西完走できたことは本当によかったです。
雪組「Lilacの夢路/ジュエル・ド・パリ!!」大千秋楽感想
生徒のためにも作品が報われてほしい
『Lilacの夢路』に関しては前に正直な感想を書いたのですが、
大千秋楽を観ても「やっぱりアカン!」という感想は変わりませんでした。
ツッコミどころ満載の雑な脚本も 音楽とダンスの振りがチグハグなのも。
でもね、この作品が好きな人も、この作品が運命の1作になった人もいるかもしれません。
私がこれまで見てきた中でトップ5に入る『ガッカリ作品』の中に、
2019年花組『A Fairy Tale‐青い薔薇の精‐』がランクインしています。
トップスター(明日海りお)の退団公演でしたが主人公は妖精。
おとぎ話に環境問題をうす~くからめた抑揚のない内容で、とにかく退屈。
ですが、私にとってはガッカリな内容でも、馳琉輝さんにとっては「この耽美な世界に入りたい」と受験を決意するきっかけになった作品です。
なので『Lilacの夢路』も誰かにとって人生を変えるほどの作品だったらいいなと。
そうでも思わないと雪組生が気の毒で。(ちなみに個人的ガッカリ作品に「ライラックの夢路」はランクインしていません)
演出・脚本家の育成問題
で、『応天の門』『カジノ・ロワイヤル』『Lilacの夢路』と脚本がイマイチな作品がつづく理由は、最近よく話題になる演出家不足と関係があるのでしょうか。
みなさんご存知のとおり110周年の作品は、植田先生、小池先生、正塚先生、中村先生など重鎮ばかり。
若い才能を全面に出すか、もしくは新旧半々くらいの人選だと思っていただけに衝撃的でした。
せめて後半には生田先生や藤井先生ら中堅どころが入ることを願うばかりです。
ここ数年、演出家によるアレコレがあったのは記憶に新しく、演出家の育成の難しさが浮き彫りに。
パワハラモラハラの問題を起こした演出家の例は論外として、
高い評価を得ながらもあっさり辞めてしまった上田久美子さんの影響は大きい。
ジェンヌたちが「いずれ卒業するときがくる」と思いながら過ごしているように、
若い演出家の中には「いずれは外部でやっていきたい」と考えている人がいるかもしれません。
もちろんそれは悪いことではありませんが、劇団にとってみれば せっかく育てた演出家に「これから」という時に辞められてはたまったもんじゃありませんね。
だからと言って若手演出家の抜擢を控えるのは本末転倒というもの。
『宝塚の演出家でありつづけたい』と思わせる何かを提供できないことには、才能の流出を止めるとはできないように思います。
ズレを感じる
スカステで演出家を特集した番組を見るかぎり、彼らの生徒たちへの愛情はとても深そうですし、良い作品にしようというこだわりや覚悟を感じます。
しかしいざ出来上がった作品を見ると客が見たいものと演出家が見せたいものにズレがあり、なんでそうなる?と。
客のニーズを分かっていないのか、演出家としての自我が強すぎるのか、そもそも書く力がないのか、その全部なのか…
こればっかりは演出家不足の問題ではなく、そもそも本人の脚本力によるものとしか言いようがありません。
いずれにせよ作品を世に出す前にチェックする機関があれば、演出家も生徒も酷評に苦しまずに済むのになとは思います。(必要以上に演出家が権力を持ち問題を起こすこともなくなるでしょうし)
結論、演出家不足と脚本力はまったく別の問題です。
ですが劇団にとって才能のある脚本演出家の育成と確保は今もっとも力を入れるべきことの一つなのは確か。
何だかんだ言って作品の満足度は脚本によるところが大きいので、
先生方にはそれぞれの感性で魅力的な物語と人物を描き、生徒の良さを引き出し、
私たちの心に一生残る名作を書いてほしいなと思います。