彩海せらさん初バウ主演・月組『Golden Dead Schiele』配信視聴しました。
彩海せら初バウ主演『Golden Dead Schiele』感想
演出は2016年入団、2022年星組バウ公演『ベアタ・ベアトリクス』で演出家デビューを果たした熊倉飛鳥先生の2作目。
1作目の『ベアタ~』は1幕80分、2幕45分というアンバランスな時間配分が気になったものの、登場人物が魅力的かつ感情のうねりが分かりやすくドラマチックでグイグイ引き込まれした。
が、今作はキレイにまとまってはいましたが、登場人物の描き方が『観る人にゆだねます』的な薄さ。
幼いときから厳しい父に怯え、学生時代には同級生からイジメられていた主人公のエゴン。
内気で一人を好むのかと思いきや、画家仲間の中心となって芸術活動に勤しんだり、自尊心が強いのは分かりましたがいまいちキャラがつかみきれず。
結果、苦悩の果てに自分自身を描いたとされる『死の乙女』の説得力が弱い。
そして何より疑問なのは、なぜ最後にもういちど冒頭シーン(シーレの最期)を見せなかったんでしょう。(ベアタは効果的に見せていたのに)。
とはいえ舞台セットや音楽の使い方は洗練されていて、先生のセンスの良さと才能は確かだと思いますし、宝塚ではおなじみの『死の影』を効果的につかった演出も見事。
何だかんだ言ってみんなフィナーレ好きですし、『ベアタ』はフィナーレ無しで残念に思う意見が多かったからか、今回はファンのニーズに応えてくださったのでしょう。
それにしてもいろんな意味で2作目って難しいですね。
次回作は『画家シリーズ第3弾』ではなく、完全オリジナルを期待しています。
キャスト感想
エゴン・シーレを演じた彩海せらさんはとにかく上手い!望海風斗さんや月城かなとさんを彷彿とさせる確かな演技と聴かせる歌。出ずっぱりでも集中力を保ったまま難しい役を演じきり、さらに一回り大きくなりましたね。次期4番手ステップアップに弾みがつきました。
愛するエゴンのために潔く身を引くモデル・ヴァリ役は白河りりさん。
プログラムの扱いや人物紹介の記載欄を見るかぎり正ヒロインと認定されたかは微妙なところですが、劇中でヒロインだったことは間違いありません。歌がうまいだけではなく演技も確か。彩海さんとの相性も良かったです。
クリムトの夢奈瑠音さん。『DEATH TAKES A HOLIDAY』の青年役から一変!ヒゲ姿とゆったりとしたセリフ回しに枯れた色気を放ち、大きな器で舞台を包んでいました。若々しくキラキラしたフィナーレとのギャップがたまらん。
同じく本編とフィナーレで違った魅力を放ったのが、記者役兼ストーリーテラーの英かおとさん。滑舌の良いセリフ回しが小気味よく、説明がスッと頭に入ってきました。スーツ姿もカッコよかったです。
そしてダンスのみで『死の幻影』を表現してみせた彩音星凪さんが素晴らしかった。つぎはお芝居で良い役がつくといいですね。瑠皇りあさん、七城雅さんら芝居上手な下級生がシーレの画家仲間を好演。
注目の娘役・花妃舞音さんは、シーレのファンだった立場から金のチカラで妻になった人物。純粋なだけでなく、ちょっとあざといお嬢様を演じさせたら天下一品。とにかく可愛かったです。次回のバウあたりヒロインが回ってくるかな。
ダンサーでありながら歌に挑戦し役の幅を広げた羽音みかさん。上級生の桃歌雪さんと佳城葵さんがガッチリ脇を固めていて安定安心。
シーレが誘拐の罪でつかまることになった幼女に大抜擢されたのは研2の彩姫みみさん。歌にも芝居にもセンスの良さを感じました。
作品づくりの姿勢
ほんと、月組の安定感たるや。
バウ公演だとは思えない芝居力と完成度。
良い作品にしようとみんなが同じ方向をむいて全力で取り組んでいる姿に感動しました。
つぎはいよいよトップコンビ退団公演ですね。
どんな素晴らしい舞台を観せてくれるのか楽しみにしています。