「公演中止で観劇できなかった人は配信(Blu-rayやスカステ放送)を見てください」と言い放った小池修一郎先生。
星組「1789」千秋楽感想
「配信を見ればいい」に物議
劇団側を代表して謝罪と慰めの気持ちを込めておっしゃったのかもしれませんが、当日公演中止をくらった身としてはガッカリな発言でした。
中止については仕方のないことですので、演出家が申し訳なく思うことも謝罪も必要ありません。
ですが、「生で観られなかったから配信を楽しみにしています」は我々の言葉であって、
劇団側がそれを言ってしまうと『パンがないならお菓子を食べればいい』とも受け取れる発言になってしまいます。(個人的意見です)
それに、本気で観劇の代わりに配信を薦めるのだとしたら、
せめて24時間のアーカイブを検討するとか、3日以内なら(いつでも都合のいいときに)1回のみ視聴可にするとか配慮は必要だと思います。
とブツブツ言いつつ、小池先生の仰せのとおり配信視聴したんですけどね。
星組の変化
結論、観てよかったです。
ほんの少し前まで礼さんに頼りきりだった星組がこんなにも集団で魅せる組になるなんて。
礼さんが出ていないシーンでも礼さんが中心にいると錯覚するくらい どのシーンも星組のパワーが集結していて圧巻でした。
暁さんや極美さんの求心力が上がったことも大きい。
次世代のスター育成と集団パワーの底上げを同時にやってのけた小池先生、(アントワネット発言はいただけませんが)アッパレです。
キャストごと感想
礼さんのお芝居がずいぶんシリアスになっていたので、娯楽作品とは一線を画し、一歩踏み込んだ偶像劇に仕上がったように思います。
誰がどう見ても礼さんは星組の御曹司なのに、ご自分では『雑草魂』と表現をされることに違和感がありましたが、なるほど、
逆境に立ち向かうロナンのすがたが数々の困難を乗りこえてきた礼さんと重なりました。
で、今まさに困難を乗り越えようと闘っているのが100期の極美慎さん。
数日前から喉を崩し心配されていましたが セリフは問題なし。
歌もフレーズ頭を1オクターブ下げて危なげなく乗りきっていました。
そういう細かいことが全く気にならないくらいの気迫とスターオーラ。大きな存在になりましたね。
あれっ?外部のミュージカルスターがいる!と思ったのが小桜ほのかさんです。
地声で張り上げるパワフルな歌唱にビックリ。
『ベアタ・ベアトリクス』では宝塚的ヒロイン歌唱で幸薄い女性を繊細に演じていませんでした?
幅の広さに脱帽です。ミーマイのマリアはぜひ小桜さんで!
暁千星さんの『武器を取れ』は絶品!なんて良い声なんでしょう。
礼さんから『ロックオペラ王子』の称号を引き継ぐのは暁さんかな。
詩さんとの相性がとても良いので「未来のトップコンビか!」なんて気のはやいことは言いませんが、とりあえず別箱で1作組んでほしいですね。
で、星組だとフェルゼンまで熱い!
天飛華音さん自身から溢れ出る情熱。
『ベルサイユのばら』とはちがう人間味あふれるフェルゼンがとても魅力的でした。
ただ天飛さんの実力からしてこの出番の少なさはもったいない。バウを楽しみにしたいと思います。
天華えまさんは星組では貴重な『ヌケ感』が出せるスター。
張り詰めた空気を一瞬でゆるめてくれて、絶妙な軽さを出すのがうまいなぁ。
ちょっぴり残念だったメンバーはトンチンカン警察(碧海さりお、稀惺かずと、大希颯)。
どこまでコメディに寄せるのか難しいところですが、ほっこりさせるハズが空回ってしまい閑話休題になっていなかったような。
うまくやれば美味しい役なのに掴みきれていない印象を受けました。
星組で『1789』が上演できたのは、アントワネットを任せられる有沙瞳さんの存在が大きかったと思います。ほんと、退団が惜しい。
そして驚くべきは95期の人材の宝庫っぷり!
礼真琴さん、瀬央ゆりあさん、輝月ゆうまさん、ひろ香祐さん。
1公演によくこれだけの95期男役を集めましたね。
同期ならではの遠慮のない芝居が物語をリアルにしていたと思います。
だって、輝月さんって本当に礼さんの顔を蹴ってませんでした?(冗談です。でも蹴っているようにしか見えない。笑)
礼さんとスポーツのようなキスがハマるのは舞空瞳さんだけでしょう。
トップ6作目なのに瑞々しさを損なわないのは、礼さんと同じエネルギーで本気でぶつかり合って、その瞬間を全力で生きているから。
舞空さんは「今がいちばん最高!」をまた更新しましたね。
完成度が高く「良いもの見た~」と大満足の星組『1789』。
礼さんがおっしゃるには「課題が見つかった」そうなので、東京の進化を楽しみにしたいと思います。