珠城りょうと美園さくら・今だからこそ

珠城美園退団1年 宝塚OG

現月組トップコンビの月城さんと海乃さん。

お二人がトップに就任して約1年という短い期間にも関わらず、充実の舞台を見せてくれています。

月城さんの当たり役がまたひとつ増えた「グレート・ギャツビー」ですが、
残念ながら公演中止延長が発表されました。

どうか今度こそ19日には再開できますように。

さて本日は、月組前トップコンビ
珠城さんと美園さんについて思うことを記したいと思います。

珠城りょうと美園さくら

珠城さんと美園さんが退団して約1年。

お二人の退団公演「桜嵐記」は良い演目に恵まれ、それはそれは感動的な公演でした。

しかし大千秋楽で起こってしまった緞帳前事件。

珠城「月組の皆さんと先生方のやさしさがあってここまで来れたの思います。もう皆さんにいろんな歌劇とかでばれちゃってるから、本当に、皆さんのあたたかさに恥じない人生をこれからも歩んでいってくださいね」
美園「はい、珠城さんこんな私を…こんな私を…こんな私をいつも導いてくださってほんとうにありがとうございました」
珠城「あ、はい」
美園「大好きです!」
珠城「導いてきたのはたぶん月組のみんなで導い てきた感じなんですけれども…はい、ありがとうございます」

千秋楽直後、珠城さんのこの対応を残念に思う声擁護する声であふれ返りました。

個人的には残念に思う派だったのですが、
先日の美園さんのインタビューをみて、少し印象が変わりました。

現在、美園さんは慶應義塾大学の大学院に通われています。

取り組んでいるテーマは
「心に問題を抱える人の逃げ道を探す手伝いができるサービス」だそうです。

しかもこのテーマを選んだきっかけというのが、宝塚時代の自身の経験のよるもの。

心に問題を抱える=自身の経験

このことにドキッとしました。

退団後約1年が経ち、本当の意味で美園さんの本音を知ることになります。

宝塚時代、私自身が様々な壁に直面し、思い悩んだからです。トップ娘役という立場をいただき、常に役と向き合ってきました。宝塚は美しい夢を描く世界ですから、自分なりの解釈を加えながら、お客様が求めるものへと、役を近づけていきます。そこに「完全」はありません。高校時代まで理系で数学が好きだった私にとって、0か1かではなく、「あれもいい」「これもいい」という中で最善のものを見つけるのは難しかったですね。いつも悩みながら、アスリートのように自分を追い込み、突っ走っていました。

otekomachiより

客が求めるものへと役を近づけていくことへの息苦しさ。

今年春に退団された演出家の上田先生も
「美しい夢を見せることが求められるけれど、今の時代それでいいのかと疑問を感じる」と語られていましたね。

美園さんも「一日たりとも気が抜けた日がない」と、要求される夢に疲れてしまったのでしょうか。

多くのジェンヌさんにとって、要求される夢に応えることは、何ら疑問を抱くことない当たり前のこと。

そしてその当たり前のことに宝塚人生をかけ、誰よりも、真摯に向き合ってきたのが、珠城さんだったのかなと思います。

ここに相容れぬ互いの考え。

公演を成功させるという、同じ目標にむかって進みつつも、そもそもの心構えが違っていたのですね。

珠城さんは美園さんのことを
「さくらは本当に大変でした。組のみんなで何とか導いたって感じです」

演出家の先生たちのはなむけの言葉にも、いかに美園さんがユニークであるかがにじみ出ています。

・齋藤先生「馬鹿がつくほど~」
・原田先生「頑固、頑固、頑固…」

退団する生徒にかける言葉としてはかなり珍しい。

美園さんが自分が異質だと感じながらも、誰にも相談できず、体にできた蕁麻疹と戦い、

宝塚という狭い世界で求められるものに必死で応えようとしてきたこと思うと、今更ながら、涙がでます。

美園さんは当時のことを、在団中から通信大学で法律を学び、それが心の余裕につながっていたと振り返っています。

そして「舞台しかないという状態だと逃げ場がないですから」とも。

多かれ少なかれ、どんなジェンヌさんにも心の平穏を保つ何かがあるのだと思います。

それがペットだったり趣味だったり…

美園さんの場合は勉強だったのですね。

そうやって心のバランスを取りながら、

「どんなときも支えてくれる上級生や先生、珠城さんに恩返しができるように頑張りたい」

と美園さんは最終的に気持ちの落としどころを見つけました。

一方、珠城さんは月組御曹司、かつ、
超エリート出世のトップスター。

それゆえ敵はつねに自分という究極の状態にさらされ続けてきました。

舞台技術を高めるために人一倍努力され、芸事に関するストイックさは見ていてヒリヒリするほど。

自分と一番近い存在である美園さんにも同じことを望んだのかなと想像します。

珠城さんと美園さんの話題があがるとき、明日海さんと花乃さんの関係がとりだたされますが、

明日海さんが花乃さんに助言した際、「もう出来ません」と花乃さんが泣いてしまったというのは有名なエピソード。

花乃さんが一人練習しているところに芹香さんがやってきて「そういうことじゃないと思う」と明日海さんの意図をかみ砕いて説明されたそう。

美園さんにとっての芹香さん的存在が暁さんで、「暁さんは寄り添ってくれるやさしいお兄さん」と慕っています。

珠城さんの「さくらは組のみんなで導いた」は本当なのでしょう。

男役トップと娘役トップには学年差があるので、師弟関係になることは想像できます。

しかし、そもそも珠城さんと美園さんとでは相容れない考えが根底にあったのではないかと思いました。

そんな二人がコンビを組むことになったこと。

スカステ番組でも話しがかみ合わない様子にヒヤヒヤすることもありましたし、緞帳前事件という最後まで残念な気持ちにもなりました。

今となっては、ただただ不器用な二人が愛おしい。

「I am from Austria」「赤と黒」「桜嵐記」など、

お二人にしか作り上げられない素晴らしい舞台は、いつまでも記憶に残ります。

現在、珠城さんは33歳、美園さんは30代目前だそう。

珠城さんはコンサートツアーや朗読ミュージカルなど舞台が控えています。

美園さんは大学院で夢に向かって、まい進中。

これからの長い長い人生で、お二人が再び交わる日がくることを願いつつ、

個々のご活躍を楽しみにしています。

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