明日海りお主演「エリザベスアーデンvsヘレナルビンスタイン」感想

明日海りお戸田恵子 宝塚OG

宝塚ファンにとって退団したOGをどこまで追いかけるかは悩みどころのひとつだと思います。

OGにとっても、どんなプロセスを踏んで女優に移行すればファン離れが防げるのか、不安との闘いでしょう。

そんななか、従来のファンを大切にしつつも媚びることなく、退団直後から『女優』という新たなステージに完全移行したおふたり。

明日海さんと望海さんから目が離せず、退団後も彼女たちの公演をかかさず観ています。

そこで本日は明日海さん主演『エリザベスアーデンvsヘレナルビンスタイン』の感想ネタバレありで記したいと思います。

明日海りお主演『エリザベスアーデンvsヘレナルビンスタイン』感想

全体感想

舞台は1900年代のアメリカ。
実在した女性起業家、エリザベスアーデン(明日海りお)とヘレナルビンスタイン(戸田恵子)の物語。

ライバル関係にある美の女王たちが主役ということで、痛快サクセスストーリーなのかと思いきや!

社会的成功は手に入れたものの家庭に恵まれず、けっして幸福とはいえない女性たちの『人間ドラマ』でした。

彼女たちを取り巻く男性たちも個性的です。

能力はあるのに妻エリザベスに認めてもらえず 浮気未遂で離婚されてしまう夫トミー(上原理生)

「離婚なんて割りに合わない、まだキスしかしていないのに」ってオイオイ!笑

優秀な営業マンなのに ヘレナから足蹴にされ 不満をため込んでいるハリー(吉野圭吾)
じつはゲイだという難しい役どころ。

自分を認めない女上司に一泡ふかせようと (企業秘密を手土産に)男たちがライバル会社に転職する展開がおもしろい。

彼らをそこまで追い詰めたのが自分たちだと理解できないエリザベスとヘレナが哀れで痛々しくて…

不器用な生き方しかできない4人から目が離せず、あっという間の3時間でした。

ストーリーはエリザベス側とヘレナ側が交互に進んでいくので分かりやすく、おいてけぼりになることはありません。

脚本も粋でオシャレ。

史実ではエリザベスとヘレナは生涯1度も顔を合わせたことはないそうですが、

授賞式のダブルブッキングという形で二人が出くわせてしまったエピソードを入れることで、ラストに余韻を持たせたのは見事でした。

そして特出すべきは着替えの多さです。

明日海さんと戸田さんが着た衣装はそれぞれ10着!さながらファッションショーでした。

明日海りお・エリザベス アーデン

『エリヘレ』取材会で明日海さんが語ったことばです。

「宝塚時代は狭い世界にいて同期生も家族よりも長く過ごす人たちだけど『みんなライバルだよ』と言われて育ってきた。人と比べられてなんぼというか。ダブルキャストもそれを楽しんでもらうような仕事。それをエネルギーにできるのか、精神的にやられてしまうのかは自分次第。自分自身の心、負けそうになる自分こそが戦う相手なのかな」

明日海さんの『負けん気の強さ』は退団後も健在。

高音域が心配される『エリザベート』『ガイズ&ドールズ』にチャレンジして賛否両論ありましたが、

いろんな意見を受け入れ 過去の自分を越えようと努力しつづける姿勢はアッパレ。

で、エリザベスアーデンの明日海さん、良かったですよ。

チャレンジしつづけた高音は危なげなく響いていましたし、圧倒的な華やかさは流石のひとこと。

老け役(エリザベスの晩年)までも演じきり新境地を開きました。

戸田さんの小柄な体からあふれるパワーには、役(ヘレナ)と同様、『自立した女の生き様』を見せつけられたように思います。

上野さん吉野さんも出すぎず引っ込みすぎず絶妙な加減で、エリザベスとヘレナの対立を盛り上げていました。

宝塚OG美麗さんをはじめとする実力派のアンサンブルメンバーが歌にダンスに大活躍。

ステキなカンパニーの中でさらに進化した明日海さん。

もち前の『負けん気の強さ』でどこまで行くのか、これからも明日海さんの活躍を楽しみにしています。

地方公演もぶじに完走できますように。

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