月組大劇場公演『フリューゲル/万華鏡百景色』貸切公演観劇。
新人公演を経て本公演のお芝居がさらに深まっていました。
新公って下級生のためだけにあるのではないのですね。本役さんの変化に驚きました。
貸切公演ということでショーも遊びが多くて楽しかったですし、アクシデント後のみごとなフォローに感心しました。
月組『万華鏡百景色』感想
鳳月杏演じる付喪神とは
『万華鏡百景色』は栗田先生がこだわりにこだわった作品で、登場する全てのものに意味があり、知ればしるほどハマっていくショーです。
月城さん(花火師)と海乃さん(花魁)が転生するというのはわかりやすいのですが、鳳月さん(付喪神)の存在はとても異質で難解です。
江戸、明治、大正、昭和、平成、令和と時代が移って みんなの衣装もカジュアルになっていくのに、付喪神の鳳月さんは変わらず。
「なんで私だけ変わらないの」と存在の仕方に苦労したのだとか。
だけど『静』でありながら舞台を動かすほどの存在感は、たくさんの経験を重ねてきた鳳月さんだから出せるのかなと思います。
そもそも付喪神とは「百年過ぎし物に宿る」と歌われているように、古くからある物に宿る神様のこと。
つまりこのショーでは江戸時代からある物(万華鏡)に宿る神様という意味のようです。
貧しい花火師が花魁に愛の証として渡した万華鏡。
本日の公演では その大切な万華鏡に関するアクシデントがありました。
思わぬアクシデント
月城さんが着物のポケットから万華鏡を取り出すはずが…
あれっ?ない?(しばしゴソゴソ)
あきらめて万華鏡の代わりに自分の手を海乃さんの手に重ねる月城さん。
「ニセモノの花火だけど許しておくれ~」と言いながら気持ち(「万華鏡忘れた」)を送っているように見えました。
本来、花火師からもらった万華鏡を覗きながら花魁が「キレイ~」と言うシーンなのですが、
万華鏡がないことを察した海乃さんは 空(2階席)を見上げながら「キレイ~」と情感たっぷり。
その言い方が色っぽくて切なくて。
みごとなフォローと、フォローに留まらない上質な演技にただただ感心しました。
月城さんも海乃さんに合わせるように空を見上げ、花火師と花魁の幸せの絶頂をみごとに表現していて流石。
初めて観た人はこれがアドリブだと気がつかなかったと思います。
で、ハラハラしたのはこれからです。
じつはこのあと万華鏡がないと物語が進まないのです。
というのも花火師と引き裂かれた花魁が床に置いた万華鏡を付喪神が拾って次の時代へ移るという流れなので万華鏡がないことには…
まさかエア(実物無し)で乗り切るつもり?とドキドキしましたが、そこはアクシデントに強いタカラジェンヌ。
花火師と花魁が追っ手から逃げるバタバタに紛れて、ある娘役さんが袖に万華鏡を取りにダッシュ。
万華鏡を手にして戻った娘役さん→月城さん→海乃さんとバトンリレーが行われ、間一髪のタイミングで花魁の手に!(心の中で大拍手)
そして花魁(海乃)が床に置いた万華鏡を付喪神(鳳月)が回収。ぶじに次のシーンへと移っていきました。
すごい連携プレー。すべてが見事で感動すらおぼえました。
星組『1789』で礼真琴さんが新聞を忘れて「新聞忘れた!取ってくる」と袖に猛ダッシュ!
暁さんや天華さんがアドリブで繋いでいたのは記憶に新しいですね。
舞台にアクシデントはつきものですが、月組も星組も機転と団結力でサラッと乗りって素晴らしかったです。
素直な月城かなとさん
月城さんのご挨拶ですが、とある貸切公演のご挨拶で貸切名をうっかり忘れてしまったことがあったのだそうです。
だけど取り繕うとせず「えーっと、何の貸切でしたっけ?」と素直に客席にたずねる月城さんに、みんなが笑顔になったのだとか。
本日のご挨拶も可愛い「えへへ」が聞けて満足でした。
中詰、片側だけハラリと垂らしたいつもと違う前髪が見られたのも嬉しかったです。
大劇場公演も残すところあと14日。
これからさらに深まっていくであろうお芝居とショー、次回の観劇が楽しみです。