月組「DEATH TAKES A HOLIDAY」感想・作品編

月組

月組シアターオーブ公演『DEATH TAKES A HOLIDAY』観劇してきました。

以下、ネタバレありで感想を記しますので読み進めご留意ください。

月組「DEATH TAKES A HOLIDAY」感想

生田先生のこだわり

とっても面白かったです。

全編を通じて、生きるとは、死ぬとは、命とは、という重い問を投げかけてはいるものの、

人間を初体験する死神のドタバタで笑いを誘い、いろんな年代のカップルの恋模様で和ませる脚本が秀逸。

モーリーイェストン氏のステキなメロディに生田先生の翻詩を乗せて、登場人物の喜びや悲しみがストレートに表現されているもいいですね。

多くの組子にソロが与えられてるのも嬉しいですし、月組のコーラスが圧巻!

そして特出すべきは、セットの豪華さです。

大劇場公演ですか?というレベルで盆が回ります。シアターオーブには盆がないので、わざわざこの公演のために盆を作ったのだとか。

盆の上にセットされた螺旋階段が、お屋敷の階段になったり、あの世へのぼる道になったり、とにかくすごい。

プロジェクションマッピングも多用されてますが、ムダはなく、叙情的な雨、戦争の描写など、効果的に使われています。

ファンタジーを盛り上げる小物たち。いくら目を凝らしても、死神が触れただけで枯れるバラの仕掛けが分からない。どうなってるの?

とまぁ、宝塚で上演するにあたり、生田先生のこだわりがパンパンに詰め込まれていて感心しきり。

ファンタジー

ひとつ勘違いしてたのですが、死神が令嬢グラツィアの命を救ったのは一目惚れしたからではありませんでした。

「どうして人は自らの命を危険にさらすのか」という興味で救ったのが全ての始まりだったのです。

むしろ一目惚れするのはグラツィアのほう。

婚約者がいながら(人間の王子になった)死神を見た瞬間、「かっこいい!ステキ!好き〜」という恋に恋する乙女っぷりに笑ってしまいました。(21歳にもなって「お月さま、こんばんは」とあいさつする彼女はファンタジー。笑)

死神とグラツィアが本物の愛を育む過程は少し描写不足のように感じますが、そこファンタジー。

そう、何だかよく分からないことはファンタジーだからとスルーできるのもこの作品のいいところ。笑

「あなた無しでは生きていけない」と燃え上がる2人。

死神が元の世界に戻るとき、グラツィアは彼について行くのか、ついて行かないのか?

ついて行くということは『死ぬ』ということを意味するワケで‥

息子を亡くした公爵(風間)
「娘まで連れて行かないでくれ。連れて行くならオレを!(将来)生まれたかもしれない命まで奪わないでくれ」と必死に訴え、

彼女と別れることを決意する死神。

「せめてあと1日でも、1時間でも、1分でも一緒にいたい」

あんなに知りたかった『人は死の間際に何を思うのか』という答えを、死神は身をもって知ることになるのです。

ですが、グラツィアは死神についていくことを決意し、ラストは『エリザベート』と同じく2人で黄泉の世界へ!です。

これをハッピーエンドととるか、サッドエンドととるかは見る人によって異なると思います。が、

残された者たちの気持ちを思うと、とてもじゃないけどハッピーだとは思えず。(死神に関する記憶は消されるとは言え、娘を失った悲しみは残るわけで‥)

フィナーレが無いのは、複雑な余韻をぶった切りたくないからかも。

と、ここまで作品のダークな部分を書き連ねましたが、安心してください。

7割はコメディ&ハートウォーミングですから。(笑)

7割コメディ&ハートウォーミング

死神が初めて人間になった日のドタバタよ!

初めて食べる目玉焼きに戸惑ったり、ロシア人設定なのでコサックダンス風キメポーズを連発したり。

死神に向かって「お会いできて死ぬほど嬉しいです」と言ってしまう執事(佳城)にも客席ウケてました。

だけどやり過ぎないのが月組。

『死』を皮肉るジョークが多いだけに、あくまでもクスッと笑える程度に留めるところがニクイ。

魅力的な登場人物

そして、その他の登場人物もみんなが魅力的です。

恋敵の死神にジェラシーを燃やすコラード(蓮)。コラードに熱烈なアピールをするデイジー(きよら)

夫を失ったショックで記憶を閉じ込めてしまったエヴァンジェリーナ(彩)じつは一目見ただけで死神の正体に気づいた人物です。

エヴァンジェリーナを一途に愛する心やさしい医者ダリオ(英真)。寂しさをもてあまし死神を誘惑するアリス(白河)

親友の死に疑問をもち死神の正体を探るエリック(夢奈)。個性豊かなお屋敷のボーイ&ガールたち。

というわけで、次回はキャストごとに感想を綴りたいと思います↓

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