本日は、元花組トップスター・柚香光さん出演の舞台、『ハムレット』を観てきました。
演出はデヴィッド・ルヴォー氏。シェイクスピアの四大悲劇という重厚な古典でありながら、幕が上がるとそこは、中世風、現代風、さらには近未来風の要素までがちりばめられた斬新な世界観。
そのなかで、現役の歌舞伎界の若きスター・市川染五郎さんが全身黒づくめでサングラスをかけ、サッカーボールをドリブルしながら登場という、演出の奇抜さに最初は驚かされましたが、二幕に向けて加速していく求心力と、舞台に漲る圧倒的な熱量に、気がつけば3時間15分(休憩20分含む)という長丁場を忘れて引き込まれてしまいました。
衝撃の美!女優・柚香光が放つ「圧倒的なロイヤル感」
今回の観劇で、私たち宝塚ファンが何よりも胸を熱くしたのは、やはり王妃ガートルードを演じた柚香光さんの姿でしょう。
宝塚男役時代には見せることのなかった、しなやかな腕を大胆に露出したロングドレス姿。
舞台に現れた瞬間、そこだけ空気がガラリと変わる圧倒的な華。息をのむほど美しく、まさに「1人ロイヤル」の気品が漂っていました。
宝塚時代よりも少し肉付きが女性らしく、柔らかさを帯びたその佇まいは、神々しいまでの優雅さです。
そして、21歳の染五郎さん演じるハムレットの母親にしては実年齢が若すぎるのでは?という開演前の予想を、その気品に満ちた説得力のある身のこなしで見事に跳ね除けていました。
お芝居のセリフ自体は決して多くはないお役ですが、前夫の死後1ヶ月後にその弟と再婚するという、一見理解しがたい判断を下した大人の女性の複雑な心理を、強さと儚さの絶妙なバランスで表現。
シェイクスピア劇ならではの少しオーバーでドラマチックなお芝居が、作品のクラシカルな格調を高めており、ダンスだけでなく言葉の劇でもこれほど観客を魅了できるのだと、彼女の役者としての進化に胸が震えました。
ちょっと笑ったのは、染五郎さんが柚香さんを突き飛ばす倒すシーン。染五郎さんは軽くしか押していないのに、柚香さんは派手にソファーにバーン!!さすがのリアクション。笑。
驚いたのは、劇中、披露宴の場でピアノを弾くシーンがあるのですが、なんと生演奏!客席を背にして弾く柚香さんの肩甲骨の美しさったら。。。。
シェイクスピア、新感線、十二国記、ラブレターズなどなど、卒業後の作品選びのセンスも抜群で、「次は何を魅せてくれるのだろう」と、これからの活躍への期待がどこまでも膨らみます。
21歳の新星・染五郎さんの圧倒的な熱量と、名優たちの競演
主演の市川染五郎さんは、21歳という若さとは到底思えない落ち着きと、全編を通して途切れることのない凄まじい集中力で、復讐に燃える若き王子を熱演。
一幕における膨大な独白セリフの量は圧巻の一言です。松岡和子さんの素晴らしい翻訳による「生きてこうあるか、消えてなくなるか」という名セリフを超絶早口で捲し立てる姿には圧倒されました。美しく表情豊かな「手」の動きも、流石は表現者の血筋を感じさせます。
対する王弟クローディアスを演じた石黒賢さんは、芝居を知り尽くした名優ならではの貫禄。過剰すぎない、真っ黒でじっとりとした「色悪」っぷりがみごとで、作品の大きな背骨となっていました。
そして、特筆すべきはラストの決闘シーン!
レアティーズ役の石川凌雅さんと染五郎さんによる決闘(フェンシング)は、最後にはお互いに二刀流となり、本当に命を懸けて戦っているかのような凄まじい迫力。
ここまではセリフの応酬による『静』の印象だったこの舞台が、この決闘により、一気にドラマチックな『激動』に変貌!クライマックスにかけての感情の畳み掛けが素晴らしかった。
また、オフィーリアを演じた當真あみさんは、華奢な身体と透明感あふれる声で、いまにも壊れてしまいそうな繊細な少女を好演。白いワンピース姿が、混沌とした世界の中で一層際立っていました。
イープラス貸切カテコの「男前」な一幕
ルヴォー演出らしく、人力で移動する衝立の向こうから、真っ白な光、赤い炎、黒い波が効果的に使われるなど、視覚的な仕掛けも鮮烈。特に、ラストでピアノの上部から火が噴き出し、足が折れて崩れ落ちる演出は強烈なインパクトを残しました。(ただ、演出だと分かっていても、ピアノの鍵盤の上にキャストが乗るのは気持ちのいいものではありませんでした)
そして、観劇したのはイープラス貸切公演!カーテンコールでは嬉しいサプライズがありました。
主演の染五郎さんから「イープラスさんの貸切ということで、光さんがどうしてもアレをやりたいそうで……どうぞ!」と、まさかの突然の無茶振り!(笑)。
柚香さんは染五郎さんの肩をパシッとたたいて「もう〜!(本当にやらせるの?)」とハニカミつつも、即座にスイッチを切り替え。
「チケット買うなら〜 eプラス!」
と、現役時代を彷彿とさせるキレ味抜群のカッコよさで「eプラスポーズ」を男前にキメて客席は割れんばかりの大拍手と笑いに包まれました。
退団されても、こうしたお茶目で男前なサービス精神は健在で、ファンとしては堪らない瞬間でしたね。
さらに染五郎さんから「劇中では光さんを投げ飛ばしていますが、裏では仲が良く、和気あいあいとしたカンパニーですのでご安心を!」と。客席大笑いでした。
明日、2026年6月13日(土) 17:00公演は配信があるそう。
役者がそろった素晴らしい舞台『ハムレット』、ご興味のある方はぜひご視聴ください。