昨日、感動に包まれた宝塚大劇場千秋楽を終えたばかりの月組。
その余韻に浸る間もなく、本日5月18日、トップスター鳳月杏さんとトップ娘役天紫珠李さんの退団が発表されました。
おふたりは2027年3月28日の『天穹のアルテミス』『Belle Époque』東京千秋楽をもっての卒業。
やはり宝塚では異色の公演、東急シアターオーブでの『NINE』はプレ退団公演だったのですね。
鳳月杏・宝塚の奇跡
鳳月さんといえば、若手の頃から落ち着いていて誰もが認める実力派。
『アリスの恋人』ではヤマネを愛らしく演じていたかと思えば、研7で出演した明日海りおさん主演『春の雪』の洞院宮治典役で見せた皇族の気品。研8、珠城りょうさん主演『月雲の皇子』の穴穂皇子役での気迫。あの頃から、すでに独自のオーラを放っていました。
大きな転機となったのは、やはり花組への組替えでしょう。
2015年『スターダム』でのバウ初主演。研10での初主演は、決して早い方ではありません。たとえば近年の爆速路線である暁千星さんの研4、平均的な研8と比較しても遅咲きと言えます。しかし、じっくりと実力を蓄えてからの主演だからこそ、鳳月さんという大器が大きく輝き出すきっかけになったのだと感じます。
鳳月さんの数ある名演の中でも、私が特に愛してやまないのが花組時代の『金色の砂漠』ジャハンギール王。溢れんばかりの大人の色香と圧倒的な包容力は、鳳月さんにしか出せない唯一無二の魅力でした。さらに伝説となった『あかねさす紫の花』のトップスター(明日海りお)との役替りは、いま思うと、このときにはすでに(月組)トップへの道が開かれていたのですね。
まぁ、当時、そんなことを知らない我々ファンは、退団ご祝儀かも?とヒヤヒヤしていたのが今では笑い話。
月組に戻ってくる頃には、すでに確固たる「路線」としての道が約束され、着実にファンの心を掴み、遅咲きと言われながらもトップの座へ登り詰めた道のりも、その後の活躍も、宝塚の歴史に深く刻まれるべき偉業です。
劇団の人事には首をかしげることも多いけれど、鳳月さんをトップスターに任命したことは称賛に値します。
途切れることのないヒロイン歴と男役の魂を持つ天紫珠李さん
一方、トップ娘役の天紫珠李さんは、元男役という異色の経歴の持ち主です。
男役時代から端正で可愛いお顔立ちで人気を集めていましたが、娘役に転向してトップ娘役まで登り詰めたのは、あの愛希れいかさん以来の快挙。
転向後すぐ、愛希さん主演の『愛聖女』に出演したことで、トップ娘役としての心得や舞台人としての姿勢を間近で学べたことは、天紫さんにとって大きな財産だったはずです。
天紫さんのこれまでの足跡を振り返ると、新人公演1回、東上2回、さらにトップ就任1年前の2023年『月の燈影』でのバウヒロインと、途切れることなくヒロインキャリアを積み重ねてきたことが分かります。
月組と宙組の間で予定されていたきよら羽龍さんと天彩峰里さんの組替え中止など、様々な波乱もありましたが、劇団が天紫さんをトップ娘役として着実に、大切に育ててきたことはこの盤石なヒロイン歴が証明。
現在公演中の『RYOFU』で見せる貂蝉の舞は、まさにダイナミックそのもの。しなやかさの中に、かつて男役として培った体幹の強さと情熱が息づいており、天紫さんにしかできないヒロイン像を確立しています。
鳳月さんとの並びの相性も抜群で、舞台にふたりっきりでも空間が埋まるスケールの大きなダンスは見ていて気持ちがいいコンビ。
いよいよ動き出す月組…の前に
おふたりの退団発表により、いよいよ月組が動き出します。
気になる次期トップコンビの予想はまた改めて記すとして、鳳月さんと天紫さんという、成熟した大人の魅力が活かされた舞台が見られるのは、あと10か月と10日。
明日行われるそれぞれの退団記者会見で、おふたりの口からどのような言葉が語られるのか、しっかりと心に刻みたいと思います。